私が患者から医者になって知ったこと|医療を内面から見た話

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私が医者または医学生になってから、初めて知ったこと、衝撃的であったことがいろいろあります。

私は今も医者を続けておりますが、医者になる前には、普通に病院にかかったり、また、入院して手術を受けたりという経験もあります。

そのときは一人の患者として、医療を受ける側にいました。看護師さんかわいいなぁみたいな感じで、普通に医療者を見ていたわけです。

そして、実際に医療者の側になって、ああそうだったのか、とか感じる機会が数々ありましたので、紹介したいと思います。


風邪は風邪薬では治らない

私も、多くの外来にいらっしゃる方と同様に、病院に行けば風邪は早く治るものだと思っていました。

しかし、実際医者になって、風邪に対して自分が処方できる薬は、ただ症状を抑えるだけで、風邪のウイルスをやっつけて早く風邪を治してくれるものではないことを知りました。

風邪を早く治すには、自分をいたわって、自分の免疫力に頑張ってもらうしかないのです。

カルテは普通に日本語だった

「カルテはドイツ語で書く」みたいな話を信じていた時期もありました。

実際に医療者側になってみると、カルテは普通に日本語で書かれており、これまで何やら読めない難しい字が書いてあると思っていたのは、普通に字がきたないだけでした。

未だに友人にカルテってドイツ語で書くんでしょ?とか聞かれます。 確かに「カルテ」という言葉自体はドイツ語のKarte(カードの意)から来ているようですが、カルテの内容は日本語で書いています。

もしかしたらドイツ語でカルテを書いている医者も、日本のどこかにいるのかもしれませんが、私はそんなカルテは見たことがありませんし、私は書けません。


多くの点滴はただの水分である

治療の種類によっては当然、点滴の中に薬が入っていることが多いですが、下痢がひどいから点滴などという場合、中に入っているのは電解質などを調整したただの水分です。

つらいから点滴してくださいという人がいますが、点滴は口から水分が取れない状況で水分補給をするのが主な目的です。

口から水分が取れるのであれば、必ずしも必要なものではありません。

医者は患者のことをそこまで覚えていない

医者になる前は、自分のことを診てくれた医者は、自分のことを常に考えていてくれているのだと思っていました。

とても重症な患者さんのことばっかり考えているということも当然ありますが、軽症であれば多くの場合は、診察が終われば次の患者さんのことに考えが移ります。

検査の結果なども、患者が次に外来に来たときに初めて目を通すということが実際多くあります。

医者は時間の流れをすごく速く感じている

外来の待ち時間は、多くの病院で非常に長く、患者にとってストレスとなっています。

しかし外来をやっている医者は、診察室の中では時間の流れをものすごく速く感じています。9時から外来が始まって一息ついたら、えっ、もう昼の12時なの?みたいな感じです。

医学生の実習で外来を見学したとき、初めて医療者側から外来を見て、それまでと印象が全く変わったことを今でも覚えています。

次から次へとカルテがつまれ、トイレにもいく暇なく、診察室の中で医者はひたすら診察しています。

世の中にはいろんな医者がいる

当然ですが、診察室で「今日はどうされました?」という内科医や、手術室で手術をする外科医だけが医者ではありません。

手術で麻酔をかける麻酔科医や、検査室で顕微鏡をのぞく病理医も医者です。 これらの職種は、患者さんと直に接する機会はとても少ないですが、医療にとってなくてはならない非常に重要な存在です。

こういった医師たちは、患者さんのために仕事をしているのですが、患者さんから直接感謝される機会がほとんどありません。

是非とも、そういった人たちがいることも知っておいてください。

何でも診られる医者は存在しない

例えばブラックジャックは、どんな病気でも診療でき、多くの病気でも治せるヒーローのような医者です。

そういった医者にあこがれる学生は決して少なくありません。私もそのような中の一人でした。

しかし、実際には自分の専門分野以外の病気を見つけたら、適切な専門の医者にかかってもらうことが、高い医療の質を保つためにはとても大事なことでした。

人間は36時間以上連続で働ける

朝早くから働いて、そのまま当直して、翌日夜までまた働くというのが、医者の世界では普通です。

話には聞いていたけれど、実際にやると意外となんとかなるもんだなと思った記憶があります。

しんどいですが。 しかし、これは悪しき風習ともいえる就労形態なので、自分も含め今後の後輩たちのためにも、近い将来、この就労形態がなくなることを祈ります。

年をとって病院に来ている人は勝ち組である

医者になる前は、歳をとって病院に通うようにはなりたくないなぁと考えていました。

実際のところ、ほとんどの人が年をとったら、何かしらの理由で病院に通っています。

しかし年をとる前に、不幸にして病気で亡くなる方がたくさんいるわけで、ひとりで外来に来るお年寄りの方は、同世代の方の中でもかなり健康な部類に入るのだと知りました。

現代医療で治せない病気が多すぎる

医者になる前、医療というものはもっと完璧に近いものだと思っていました。

しかし実際に医療の現場に出ると、多くの病気に対して、現代の医療は無力です。

治療法があるとしても病気の進行を抑えるに過ぎなかったり、まだまだ発展途上です。

日々医療は進歩しているとはいえ、現代の医療で治せる病気の数は非常に限られています。1人の医師として、今後の医療の発展に少しでも関わることができればと思います。

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まとめ

今あらためて並べてみると、どれも当たり前のことなのですが、医療になじみのない人にとっては、普段あまり考えないことなのではないかと思います。

他の職種でもそうかもしれませんが、医療というのは思った以上に、外側から見るのと内側から見るのとで、まったく違って見えるものですので、これらのことを知っておいていただければ幸いです。