お薬手帳の利点|20円はなぜ惜しむべきではないか徹底的に解説する

entry_img_118.jpg

ここ最近お薬手帳を断れば安くなるみたいな内容がツイッターで拡散されていました。

「お薬手帳断ろう、20円安く」で情報拡散 薬局などは有用性PR 

これに対して1人の医療者として意見を申し上げますと、お薬手帳は絶対に断るべきではありません。

私は以前、お薬手帳は病院にかかる際に非常に大切だという記事を書きました。

お薬手帳は大切です!東日本大震災で活躍した大事な役割

お薬手帳をもらっているのに、持ってこないという方が多いように思います。また、お薬手帳はいりませんという方も中にはいらっしゃいます。しかし、お薬手帳は非常に大切です。これについて説明します。

そもそもなぜ断ると安くなるようなシステムにしたのか、診療報酬を改定した厚生労働省の方々にはぜひとも考え直していただきたいと思います。

では、なぜお薬手帳を断るべきではないのか、あらためて、さらに詳しく説明していきたいと思います。


薬が誤って重複投与されることを防ぐことができる

診察室で「お薬何か飲んでますか?」と聞かれたとき、お薬手帳を見せるだけで、あなたが何の薬を飲んでいるのか一目で医師に伝わります。

特に普段と違う病院にかかるときに、医師に自分の飲んでいる薬を伝えることは、飲み合わせの悪い薬や同じ成分の薬を処方されないために必須です。

よく、「血圧の薬で、赤いやつ飲んでます」とか、色や形で伝えてくれる人がいますが、世の中に存在する薬の種類、数は膨大であり、それだけでは医師には伝わりません。

また、それぞれの薬の製品名と成分名は別なので、違う名前であっても同じ効果や似た成分であることがあります。

そのため、薬の名前を知っていれば自分で重複処方を避けられるというわけではないのです。 医師に薬の製品名を伝えれば、その場で成分名などを確認し、重複となるような処方にならないように確認してもらえます。

ですので、重複処方を防ぐためにはお薬手帳を見せて、あなたの飲んでいる薬の「名前」を医師に伝えることが必須なのです。

服薬内容を医師に正しく伝えることが出来る

じゃあ自分で飲んでいる薬の名前を全部覚えていればいいじゃないかと思われるかもしれません。

しかし私の経験上、お薬手帳なしで自分の飲んでいる薬の名前を覚えている患者さんというのはほとんどいらっしゃいません。

多くの方が、聞いたことのないような薬の名前を言われたり、色や形だけで教えて下さいます。 言い間違いだったら、「血圧のノンバスク」(正しくはおそらくノルバスク)、「コレステロールのリピートン」(正しくはおそらくリピトール)などは日常茶飯事です。

多少間違えても伝わってるんだからいいじゃないかという人もいらっしゃるかもしれませんが、あなたの安全のためにも、そのような間違いの元になるかもしれない要素は絶対に取り除くべきです。

薬の名前が覚えにくいのは確かに問題ですが、だからこそ薬の取り扱いに間違いがないように患者側も医療者側も注意しなくてはいけません。

しかも最近ではジェネリック医薬品が増え、それらはそれぞれ名前が違います。 紛らわしい薬の名前も増えており、より薬の取り違いの危険は増しているのです。

ですので、薬の取り違えなどの間違いを予防するためにも、正確な薬剤名と投与量が記載されたお薬手帳の重要性は、より大きくなってきているのです。


アレルギー副作用の原因を推測するのに役立つ

ほとんどの薬には何かしらの副作用があり、人によっては薬を飲むことでアレルギーが出ることもあります。

何か困った症状で病院にかかるとき、それが薬によるものかどうかを調べるためには、お薬手帳はとても大切な情報源になります。

どういうことかというと、薬をいつから飲み始めたか、お薬手帳を見れば記録してあるからです。 実際の私の経験上、自分がその薬をいつから飲み始めたかを正確に覚えている人は非常に少ないです。

お薬手帳などと比較して本人の記憶が正確な服薬開始時期と数ヶ月くらいズレている人は普通にたくさんいます。

また、薬の説明文書を保存しているだけでは、薬をいつから飲み始めたかは分からない可能性があります。

ですので、何か症状があって病院を受診するときには、薬の影響の可能性を考える必要があるので、薬の開始日時の載っているお薬手帳を提示することが大切なのです。

アレルギーや副作用の出た薬が誤って再投与されることを予防できる

お薬手帳には、アレルギー歴や副作用歴を記載する欄があります。 ここにあらかじめ自分の過去のアレルギーが出た薬、副作用が出た薬を記載しておくことで、同じ成分や似た成分の薬の処方を避けてもらうことができます。

薬のアレルギー歴や副作用歴に関しても、重複投与の場合と同様に、薬の名前を医療者に正確に伝えることが必要になります。

医療者側にアレルギーを起こしたことのある薬の名前を伝え忘れると、処方された薬の名前は違っても実は以前アレルギーを起こした薬と同じ成分だったということがあり得ます。

お薬手帳を病院に持っていき診察室で医師に見せることで、アレルギーや副作用が起きたことに関して、医師への伝え忘れを防ぐことができます。

緊急時にはカルテの代わりになる

東日本大震災で、多くの医療機関が診療不可能となり、患者さんのカルテなどの医療情報へのアクセスができなくなりました。

しかし、お薬手帳を持っていた人は、他の医療機関でお薬手帳を見せることで、これまでと同じ薬の継続処方を受けることができたのです。

緊急時に限らず、旅行先などで薬がきれてしまったという場合には、適切な薬を病院で処方してもらうためにお薬手帳は必須です。

また、医療者からすれば、患者さんの飲んでいる薬を見れば、その人の持っている病気をある程度は推測することが可能です。

飛行機や新幹線内などで病態が悪化した場合などにも、乗り合わせた医師がもしいた場合、お薬手帳を見せれば、自分の病態を大まかに伝えることができるわけです。

お薬手帳を携帯しているのとしないのとでは、病院外で何か起きたときに受けられる対応に関しても大きく変わってくるのです。

診察時に一瞬で服薬情報が医師に伝わる

これは医師目線の話になりますが、服薬内容を診察室で確認するのには、実はすごく時間がかかります。

高齢の方で、お薬手帳を持ってきていない人の場合、薬の内容を確認するやりとりだけで10分以上も時間を取られることがあります。

しかも、具体的な薬剤名を記載したメモなどがないと、それだけ時間をかけて確認しても、それが正確な服薬情報なのかどうか確信できないのです。

日々の診療で、診察室での服薬内容確認は、実は非常に大きな時間的負担となっています。

診察の際の待ち時間の長さがよく取り上げられて問題になりますが、患者さん全員がこのお薬手帳を携帯するだけで、おそらく病院の待ち時間は短縮されると思われます。

スマホのアプリも使うとより便利になる

現在、お薬手帳を電子化して広めるために、様々なスマートフォンのアプリが開発されています。

既にダウンロードして利用することができますが、スマホだと電池切れで使えなくなる、自分で服薬情報を入力しなくてはいけないなどの問題などがあります。

また、自分で薬の情報を取り込むものがほとんどで、更新をし忘れたりという可能性もありますの、一応紙のお薬手帳と並列で使うことが推奨されています。

また、手帳は持ち歩くのに不便という方にとっても、服薬内容を管理するスマホのアプリはとても便利です。

スマホのアプリでは、紙のお薬手帳でできることに加えて、薬の飲み忘れを防ぐアラーム機能など、より役に立つ機能がついています。

無料でダウンロード可能なアプリの一部を紹介しておきます。

「お薬手帳プラス」日本調剤の電子お薬手帳

「お薬手帳プラス」日本調剤の電子お薬手帳
無料
posted with アプリーチ

 

お薬ノート -薬歴・服薬管理-

お薬ノート -薬歴・服薬管理-
開発元:Plusr Inc.
無料
posted with アプリーチ

 

e-お薬手帳

e-お薬手帳
開発元:STNet Inc.
無料
posted with アプリーチ

 

アインお薬手帳 ~あなたとご家族の服薬管理アプリ~

アインお薬手帳 ~あなたとご家族の服薬管理アプリ~
無料
posted with アプリーチ

 

これらのアプリは今のところ無料であり、自分で服薬情報を取り込む手間はかかるものの、薬剤服用歴管理指導料の余分な金額もかかりません。

アプリによっては、薬局で発行されるQRコードをスマホのカメラで読み取ることで、自動的に服薬内容を取り込むことが可能で、今後こういった機能は一般的になっていくのではないかと思われます。

現時点では利用できる地域や機能が限られていたり、まだまだ発展途上という印象もありますが、飲んでいる薬の情報を持ち歩くのに役立つことは間違いありません。

今後スマホ普及率の低い高齢者などにどのように対応するかといった課題も残されていまが、将来的に紙のお薬手帳に置き換わっていくことが期待されます。

post_img_118.jpg

まとめ

お薬手帳は、病院を受診するとき、服薬管理をするときに非常に大切です。ぜひとも、飲んでいる薬の情報は持ち歩いていただきたいと思います。

また、風邪薬程度ならいらないということはなく、万が一副作用やアレルギーが出た場合、引き続き他の病院を受診した場合などに役立ちますので、お薬手帳の大切さは処方の量や程度によりません。

20円安くなるからお薬手帳なんかいらないという人は、もう一度お薬手帳の利用に関してこの機会に考え直していただきたいです。

そしてもしこのままの診療報酬制度でいくのであれば、個人的には診察室での内服薬の確認に関して服薬内容確認料をかけて、お薬手帳の提示で無料にするシステムをつくってほしいと思います。

お薬手帳を断ると安くなるというシステムを作ってしまった方々にも、どうか考え直していただきたいと思っています。