インフルエンザとノロウイルスの迅速検査は意味あるの?

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上司に言われて来ましたという方、結構いらっしゃいます。 その多くが、「インフルエンザかどうか診てもらうようにいわれたので」とか、「ノロウイルスかどうか診てもらうようにいわれたので」というケースです。

おそらく、職場内でインフルエンザやノロウイルスが出たため、同じような症状がでている方を病院へいかせて確認しなくてはいけないのかなと思います。

検査の結果で帰宅させるかどうか、または逆に出勤可能かどうか判断するのでしょう。

しかし、ここで問題があります。「検査が陰性だから大丈夫です」とはいえないのです。


インフルエンザ迅速診断感度は6割

まずインフルエンザの検査から見ていきましょう。 インフルエンザ迅速診断の正確性に対する調査が報告されています。

この報告ではインフルエンザにかかった人を陽性と正しく診断する確率は62.3%にすぎませんでした(参考文献1)。

残りの4割弱の人はインフルエンザにかかっていても、迅速診断で陰性といわれてしまっていたのです。 つまり、インフルエンザ迅速診断で陰性だったから、「帰宅しなくていいですよ」とか、「出勤できますよ」とかは決して言えないのです。

インフルエンザらしい症状があったけど、病院に行かせて検査で陰性だったから職場で引き続き働かせるというのは、周りに感染をまきちらす危険性が大です。

疑わしかったらインフルエンザとして扱って、検査陽性陰性に関わらず帰宅してもらうのが医学的に正しい対応だと思います。

ちなみにインフルエンザではかかった場合の出席停止が学校保健安全法で規定されています。詳しくは

インフルエンザの出席停止期間|学生と社会人で法律上なにが違う?

インフルエンザの正しい出席停止期間をご存知ですか? 2012年4月に学校保健安全法が改正され、より厳しい出席停止期間が定められています。

で説明しておりますので、参考にしていただければと思います。

ノロウイルス迅速診断感度は9割だが自費

つぎにノロウイルスの検査です。まず、ノロウイルスの迅速検査の保険適応は

  1. 3 歳未満の患者
  2. 65 歳以上の患者
  3. 悪性腫瘍の診断が確定している患者
  4. 臓器移植後の患者
  5. 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、又は免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者

に限られます(参考文献2)。つまりほとんどの方が自費になってしまうのです。

検査について詳しく説明しますと、ノロウイルスは下痢を引き起こすので便中にウイルスがいないかチェックする迅速診断キットが用いられます。

ノロウイルス迅速診断の正確性の調査では、ノロウイルスにかかった人を陽性と正しく診断する確率は81.6%でした(参考文献3)。

近年では改良されて90%を超えるまでになっているようです(参考文献4)が、やはり完全ではないので注意が必要です。

ノロウイルスにかかっても1割弱の人は検査陰性といわれてしまうのです。インフルエンザと同様に、検査で陰性だから大丈夫といえるわけではありません。

また、ノロウイルスと診断できても、治療は水分補給や整腸剤などに限られます。ノロウイルスに特別な治療があるわけではありません。

インフルエンザと同じく、疑わしいのであれば自費検査などせず家で安静に過ごすのが、感染を広げない観点からも、治療の観点からも一番よいでしょう。

ちなみに、食中毒や集団感染の原因究明などの目的でより正確性の高い特殊検査を行う場合、医療機関ではなく行政機関や研究機関で行われます。


検査陰性だから大丈夫というわけではない

職場では、病欠とするために診断書が必要なのかもしれません。それは現在の社会システム上仕方のないことなのかもしれません。

しかし、検査が陰性であっても、医師が診察して疑わしいのであれば「ノロウイルス疑い」、「インフルエンザ疑い」の診断名で診断書を作成してもらい職場に提出して休むほうがよいと思われます。

また、検査や診断書が必要といわれたのならば、自費の検査に関しても会社が強制的に求めるのかを確認しましょう。

部下を病院にいかせる上司の方にも、検査陰性であったからといって大丈夫というわけではないことは知っておいていただきたいと思います。

まとめ

医学的にはインフルエンザやノロウイルスの検査が陰性であっても、疑わしければ職場に行くことは感染を広げないために避けるべきです。

そのような社会コンセンサスが必要と思います。

(参考文献1) Ann Intern Med. 2012 Apr 3;156(7):500-511
(参考文献2) 大塚製薬 クイックナビ-ノロ 保険収載情報より
(参考文献3) 医学と薬学. 2009年5月:61(5):779-785
(参考文献4) 医学と薬学. 2012年12月:68(6):1033-1039