医者がつくる病名手帳ってあったら便利だなぁと思った話

先日、お薬手帳をもらうと20円高くなるという話が出てきて、お薬手帳の大切さをわかってもらおうと医療者側が必死になっています。
お薬手帳は本当に大事なので、以前に下記の記事を書きました。
お薬手帳をもらっているのに、持ってこないという方が多いように思います。また、お薬手帳はいりませんという方も中にはいらっしゃいます。しかし、お薬手帳は非常に大切です。これについて説明します。
お薬手帳の利点|20円はなぜ惜しむべきではないか徹底的に解説する
ここ最近お薬手帳を断れば安くなるみたいな内容がツイッターで拡散されていました。これに対して1人の医療者として意見を申し上げますと、お薬手帳は絶対に断るべきではありません。
こうやってお薬手帳の大切さを考えなおすと、お薬手帳とは別に医師側からもこういった手帳を患者さんに渡してもよいのではと思ったので、それについて書いてみたいと思います。
病名手帳ってあったらいいんじゃないかなぁと思った話
お薬手帳は重複処方を防ぐ役割などがありますが、医師側からすると患者さんが何の薬を飲んでいるか一瞬でわかるという点がなにより非常にありがたいと思っています。
お薬手帳が東日本大震災でカルテ替わりになったという話もありますし、震災時でなくても旅行先などで何かあったときにも病院にかかるときに便利です。
お薬手帳で飲んでいる薬を見れば、その人がどんな病気をもっているのか、ある程度は推測できるからです。
だったら、患者さんが持っている病気の名前をすべて医師が記載して、手帳として持ち歩いてもらったら、患者さんにとっても医療者にとっても便利なのではないかなぁと思いました。
※2016年2月10日追記
実際に2014年から、日本医師会が「かかりつけ連携手帳」を提案し、2015年9月から手帳の素材をインターネット上で公開しています。まだまだ広まってはいませんが、今後こういった手帳が地域医療のレベルで広がっていくことが期待されます。
自分のこれまでの病気を正確に言える人って少ない
外来での私の経験ですが、「なにかこれまでに病気にかかったことありますか?」と聞いて、きちんと答えてくれる人ってすごく少ないです。
中には「これまで病気したことないです!」という人に、お腹の診察をしようと服をめくると、大きい手術のあとがあったりします。
詳しく聞くと「ああ、そういえば昔、胃潰瘍で手術しました」なんでことが日常茶飯事です。 一方で病院に慣れている人は、これまでの自分の病気を全部紙に書いてきてくれたりして、これは医師からすると非常にありがたいです。
おそらく、診察室で医師と向かい合った状態で、自分の昔の病気を正確に全部言えている人は少ないのではないかなと思います。
病名を書いた手帳を医者側で作れないだろうか
医者にもよるかもしれませんが、一般的な医者の書くカルテには、患者さんの病気について、整理して書いてある部分があります。
医療者側で情報を共有するために、この人はこういった病気があって、こういった問題点で今病院にかかっているのだなとすぐわかるようになっているわけです。
例えば、過去に胃がんの手術をしたことがあって、今高血圧と尿酸値が高いから通院しているという人であれば、
「#1 本態性高血圧症 #2 高尿酸血症 #3 胃がん手術後」
みたいに、その患者さんにとって大事な点を、カルテの一か所にまとめて記載しておきます。
この部分を書き出して持ち歩いてもらえれば、患者さんが他の病院で自分の病気を説明するときに、言い忘れを防ぐことができそうです。
お薬手帳にも病名を書く欄がありますし、場合によってはシール化して、お薬手帳に貼っておけばもっと便利そうです。
旅行先で何かあって他の病院にかかるときにも役に立ちそうです。 実際に病院によっては、治療内容をカードに記載して患者さんに携帯してもらうところもあるようですし、企業でこのようなシステム作成に取り組んでいるところも実際にあるようです。
病院の提供するサービスの一環として、このようなものが広まれば、お薬手帳と並んで非常に便利になるのではと思ったので、ちょっと書いてみました。
まとめ
医者が病名手帳をつくって患者さんに持ち歩いてもらったら、患者さんにとっても医者にとっても、役に立ちそうだと思いました。
こういうことをやっている病院って、もしかしたらもうあるのかもしれないですが、やるにあたって問題がないのであれば、自分の外来でためしてみたいとちょっと思っています。