ぎっくり腰や慢性的に腰が痛いのは何科で相談?|腰痛の原因について

内科の外来であっても、腰が痛いという相談をよく受けます。 確かに内臓の病気で腰痛が起きることもあり、内科でもそのような病気が隠れていないか調べることは可能です。
しかし、日常的に最も多く腰痛を診療している科となると、整形外科になります。 実際に、腰痛の診療ガイドラインを出しているのは日本整形外科学会と日本腰痛学会です。
特に慢性的に腰痛に悩んでいて詳しく相談したいという場合、整形外科を窓口とするのが適しているといえます。
一方で急激に起こった腰痛であれば、緊急性の高い内臓や血管が原因の腰痛も除外する必要があります。
実際のところ整形外科の他に内科や救急科が窓口となって原因を調べ、適切な診療科を紹介しているのが現状です。
ここでは、腰痛にはどのような原因があり、最終的に何科が専門となるのかについて書いていきます。
様々な病気によって腰痛が起きる
腰痛の原因には、様々な病気があります。また、原因のわからない非特異的腰痛とされるものも多いです。
原因が分かるものについて大きく分けると、脊椎が原因となるもの、神経が原因となるもの、内臓が原因となるもの、血管が原因となるもの、そして精神的原因から来るものに分けられます。
以下、それぞれについて具体例を挙げて説明していきます。
脊椎の病気が原因となる腰痛
脊椎(せきつい)とは、いわゆる背骨のことです。 ヒトの場合、合計33個の椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨が、縦に並んで背骨となって体重を支えています。
それぞれの椎骨のあいだには、椎間板(ついかんばん)と呼ばれる軟骨があり、これによって背骨が動けるようになっています。
そしてその骨の中の椎孔(ついこう)と呼ばれる部分を、神経の束である脊髄(せきずい)が通っています。 手足を支配する神経を含む体中の様々な神経が、この脊髄とつながっています。
脊椎が原因で腰痛となるケースは非常に多く、一部の例を挙げますと椎間板がずれてしまう腰椎椎間板ヘルニア、脊髄の通り道が狭くなってしまう腰部脊柱管狭窄症などがあります。
また、腰を強くぶつけたりして脊椎の椎体骨折が起きたり、脊椎に腫瘍ができてしまったり、背骨が曲がってしまって脊柱変形となっても、腰痛が起こります。
重篤な脊椎の病気が疑われる場合の診断については、整形外科におけるMRIをはじめとした専門的な画像検査が有用とされています。
これら脊椎の病気が原因となる腰痛を専門的に診療しているのは、整形外科ということになります。
神経の病気が原因となる腰痛
上では脊椎という骨の不具合が問題になる腰痛を説明しましたが、今度は脊椎の中を通る神経の束、脊髄の病気による腰痛です。
一部の具体例を挙げますと、脊髄自体に腫瘍ができてしまう脊髄腫瘍などが挙げられます。 腰痛で整形外科にかかり、MRIなどの画像検査で診断されることが多いと思われます。
ちなみに脊髄腫瘍で手術が必要となった場合、脊髄腫瘍は整形外科と脳神経外科の境界にある病気であり、整形外科医だけでなく、脳神経外科医が手術をする場合もあります。
一般的に骨側の手術を日常的に守備範囲としているのが整形外科、脳や神経に関連する手術を守備範囲としてるのが脳神経外科となります。
内臓の病気が原因となる腰痛
内臓が原因となる腰痛で、多いものとしてまず挙げられるのは腎臓の病気です。
様々な臓器の中でも腎臓は背中側にあるので、なにか問題が起きたときに腰痛という形で症状が出てくることが多いのです。
腎臓はおしっこを作る臓器であり、腎臓でつくられたおしっこは尿管を通って膀胱に貯められます。
腎臓の結石などによってそれが塞き止められてしまうと、腰痛という症状になって出てきます。 他にも感染症の炎症が腎臓まで及んでしまった腎盂腎炎でも腰痛が起きます。
本来、腎臓の病気に関しての専門は腎臓内科ですが、腎結石や腎盂腎炎などを専門的に診療するのは泌尿器科になります。
尿管に直接カテーテルを通したり、結石を砕いたりなどといった処置が必要になるケースがあるからです。
腎臓以外には、女性の場合の子宮内膜症、さらには妊娠でも腰痛となって症状が出てくることがあります。このような場合には、専門となるのは産婦人科になります。
さらに、ほかのお腹の中の臓器に異常があって腰痛となる場合には、消化器内科、手術が必要であれば消化器外科が診療することになります。
血管の病気が原因となる腰痛
脊椎の近くには、大動脈という太い動脈が走っています。 これに障害が起きると、背中が痛くなったり、腰が痛くなったりという症状がでてきます。
具体的には、血管の壁に裂け目ができてしまってコブになってしまう解離性大動脈瘤などがあります。
これら血管の異常に関しては、循環器内科または手術が必要であれば血管外科が専門的に診療します。

精神的原因から来るもの
慢性的な腰痛と関連が知られている一部の精神的要因として、うつ病や失感情症などが挙げられます。
また、腰痛が軽くてもうつ状態や過労などの心理的、社会的な影響が、腰痛による機能の障害を悪化させることが知られています。
これらの精神的要因に関しては、精神科や心療内科の専門領域となります。
まとめ
腰痛の原因は多彩です。多くは原因不明の非特異的腰痛ですが、中には病気が隠れていることもあります。
腰痛で悩んでいるという場合には、まず整形外科を窓口として相談していただき、原因を調べてもらった上で、どの科で治療をうけるべきか相談していただければと思います。
参考文献)
綜合臨牀 55(5):1539-1540:2006
腰痛診療ガイドライン2012 日本整形外科学会 日本腰痛学会