まともな医者であるほど前の医者を悪く言わない|後医は名医

前医に対する不満があるケース

よく患者さんに、前にかかった医者がどれだけひどかったかという文句を言われることがあります。

しかし私はその場では、それに同調して前の医者を悪く言うことはありません。 これに対して、「医者同士かばいあっているんだろう」と言う人がいるかもしれませんが、そうではありません。

今回の話はこんなこと言っていいんだろうか的な本音の部分もありますが、それもふくめて医者が患者さんに同調して前の医者を悪く言わない理由について説明したいと思います。


後医は名医という言葉がある

医療において、正確な診断にたどりつく確率は本来であれば100%であるべきですが、残念ながら今の医療はそうではありません。

病気を見つけて正しい治療を行える確率は、医療者は100%に限りなく近づけるべく努力をしていますが、人間がやっている以上決して100%にはなりません。 実際に、「後医は名医」という言葉があります。

後から患者さんを診た医者のほうが、前の医者での情報をもとに診療できるため、正確な診断や治療にたどりつきやすいという意味の言葉です。

また、前の医者では見つけられなかった病気が、時間が立つことでより分かりやすくなり、後から見た医者の方が病気を見つけやすいという意味もあります。

逆に、最初に診た医者は、後から診た医者と比べて病気が初期の見つけにくい状態で、かつ情報も少ない状態で診療していたことになるわけです。

ですので、患者さんと一緒になって、最初の医者に対する文句に同調する医者というのはほとんどいないはずです。

同意してもらえなくても不満に思わないでいただきたいと思っています

偏った情報だけでいいか悪いかは判断できない

もう一つ、医者が前の医者の悪口に同調しない理由として、患者さんからの情報だけで本当に前の医者のしたことがひどかったかどうかは判断できないということが挙げられます。

「患者のいうことを信じないのか!」という反論が来そうですが、医療に限らず何か揉め事があったときには、両者の言い分を聞いた上でないと、何が正しいのかを判断をするのは難しいはずです。

ですので、患者さんから前の医者の文句を言われたとしても、患者さんの言い分だけでは、前の医者が本当に落ち度があったかどうか判断しないのです。

実際に「前の医者にこんなことされた!」という話をよく確認すると、問題のない標準的な治療であったことも多々あります。

中途半端な情報だけで、一方的にあの医者はひどいみたいな話に同調すると、「あそこの先生があの医者はひどいって言ってた」と噂が広まったときに、非常に困ります。

そのため、たとえ本当に前の医者に落ち度があると考えられるケースでも、詳細な情報を確認してからでないと、医者は前の医者に対する文句には同調しないのです。


前の医者に対する文句をいってもらうこと自体は歓迎です

しかし誤解を避けるためにいっておくと、診察室で前の医者に対する文句をいってもらうこと自体は大歓迎です。

前の医者のところでどのような経緯があったのか、どのような点に納得がいかなかったのかを教えてもらうのは、正しい医療をすすめる上で貴重な情報です。

たとえそれが患者さんの主観的な考えであったとしても、医者にとっては目の前の患者さんがどういう人なのかを理解する情報になります。

ですので、文句を言っていただくのはまったく問題ありませんし、むしろ歓迎なのですが、同意してもらえなかったからといって不満に思わないでいただきたいというのが正直なところです。

前の医者を一緒になって悪く言う医者がいたら

逆に、患者さんが言った前の医者の文句にすぐに同調して一緒になって悪く言う医者がいたら、ちょっとどうなのかなと思います。

本当に前の医者が明らかに医学的におかしいことをしていたとわかる場合は別ですが、世の中にはとにかく自分の病院の患者を増やすことを優先している医者もいないわけではありません。

医者にとって、長い時間をかけて患者さんとの信頼関係を作り上げる以外に、良い評判を得る方法はないはずです。

しかし、そのような正攻法では患者さんを集められなかったら、とにかく患者さんの言うことに同調しようとするかもしれません。

文句を聞いて事情を詳しく確認せずに、「それは本当にひどいね、そんな医者はやめた方がいいですよ」みたいなセリフを言う医者ほど、気をつけたほうがよいと個人的には思います。

詳しく説明してもらうことは歓迎です

まとめ

患者さんに前の医者に対する文句を言われても、まともな医者であればその場で同調することはほとんどありません。

後医は名医という言葉が示すように、後から診た医者ほど正しい医療を提供できる可能性が高いことを知っているからです。

また、本当に前の医者に落ち度があったかどうか判断するためには、情報が不十分であるという理由もあります。

しかし、前の医者に対する不満を言っていただくこと自体は歓迎です。それは、診療に対して貴重な情報となることもあります。

ただ、前の医者に対する文句に同意してもらえなかったからといって、不満に思わないでいただきたいというのが正直な気持ちです。