人間ドック学会の高血圧の新基準の真相ってけっこうヤバい話なのでは

評判のよくない日本人間ドック学会と健保連による150万人のメガスタディー

2014年の4月に日本人間ドック学会と健康保険連合会が発表した「新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会健保連による150万人のメガスタディーが、未だにいろいろと話題になっています。

上の写真ほど険悪ではないのですが、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会 、日本医師会、日本医学会が患者さんに対して注意を呼びかける声明を発表し、新基準の話は思ったよりボコボコにされています。

事の顛末については、以前まとめておりますので、参考にしていただければと思います。

なにやら血圧基準値で日本高血圧学会と人間ドック学会がもめている

上の写真ほどもめているわけではないのですが、この2014年4月に日本高血圧学会が出したガイドラインの血圧基準値と人間ドック学会が出した基準値がズレていて、患者さんの誤解をまねく危険があると注目を集めています。

クリックがめんどくさい方のために説明してしまうと、日本高血圧学会が140/90 mmHgが高血圧の診断基準値と定めています。

しかし、日本人間ドック学会と健康保険連合会が「血圧は147/94 mmHgまで正常だ!」とぶち上げたわけです。

その結果、多くの患者さんが高血圧に対して「べつにいいじゃない」的な考えを持ってしまい、実際に私の外来で薬を減らしてくれという人もいます。

そして最終的に日本人間ドック学会と健康保険連合会の発表がいろいろな学会から責められているのが今の状態ということになります。


大切なのは血圧の数値ではなくて将来脳梗塞や心筋梗塞にならないこと

詳しくは上のリンクの記事でも書いてありますが、この147/94 mmHgという人間ドック学会が発表した基準は、今現在健康な人の血圧の上限値であって、治療すべきかどうかの基準値ではないのです。

高血圧を治療すべきかどうかは、高血圧を治療することで脳梗塞や心筋梗塞を予防できるかどうかで判断されています。

ですので、言ってしまえばいま健康な人の血圧がいくつかどうかで基準をつくっても、治療すべきかどうかの基準値とは関係ないのです。

しかし、その辺を詳しく説明せずに情報がマスコミを通して広まったため、「血圧は多少高くてもいいじゃないか」的な考えが広まってしまったのが実際のところです。

この騒動は日本の医療崩壊の一つの図なのかもしれない

この問題でけっこうヤバいなぁと感じるのが、医療費抑制との関係です。

高血圧で薬を飲む人が減れば医療費が減るだろうという考えで、このような発表がなされたのであれば、これは日本の医療崩壊の一つの流れなのだろうなと感じます。

血圧、血糖値…新健康基準の衝撃 なぜ従来の正常値を大幅緩和?薬剤費抑制狙う健保

今後高血圧治療を縮小するために、高血圧は厳しくなくても大丈夫だという情報を全国に広めるという意図であるならば、その作戦は成功してしまったといえるでしょう。

もしそうだとするならば、日本の医療費は国民の健康を犠牲にしても縮小しなくてはならないという段階がいよいよ現実化してきていると受け取れます。


この情報戦略が本当に正しい医学に基づいているのかは疑問

医療費を縮小するということに関していえば、本当に今現在の高血圧治療に手をつけるべきなのかは疑問に思います。

高血圧を放置していて脳梗塞や心筋梗塞になるという年代の人たちには、現在働き盛りで国の経済を支えているであろう人たちが多く含まれると考えられます。

そのような人たちに対する治療を縮小することが、本当に日本の経済に対してプラスに働くのかという問題があります。

批判や誤解を恐れずにいってしまえば、家で静かに最後を迎えたいというお年寄りに無理やりつぎ込まれる高度医療よりも、働き盛りの人の高血圧治療の方が先に切られようとしているのはけっこうすごいことです。

また、高血圧で薬を飲む人を減らすことで、最終的に心筋梗塞や脳梗塞になる人が増えることになれば、結果として医療費は増えるかもしれません。

これに関しても、基準値をゆるめようとするのであれば、基準値をゆるめた場合に起きる病気での労働力の損失や、そこに投入される医療費の増加がどうなるのかを試算して示すのが先ではないかと思います。

イメージ先行型の情報戦略が医療において許されるのか

しかしそれらに対する具体的な試算や科学的検証の発表はなく、「いままでの高血圧の基準は厳しすぎた」というイメージだけを拡散したのが今回の騒動です。

おそらく、今回の発表とマスコミによる拡散で、薬をやめてしまった高血圧の人も多いのではないかと考えられます。

実際に外来で、「過剰医療だ!血圧の薬はいらない!」と怒り出す人もいます。

しかし本当は「医療費を削減するのであなたは治療しなくてよいということにしますね」と言われているわけで、こういう人はむしろ別の方面に対して怒ってよいのではないかと思います。

今回の情報戦略が本当に医療費抑制を意図しているとするのであれば、医学的にも倫理的にも医療経済的にも、非常に多くの疑問が残る戦略です。

まとめ

高血圧の治療は血圧を下げるためではなく、将来脳梗塞や心筋梗塞にならないためにあります。

高血圧治療の本来の意味をしっかりと押さえた上で、今回の騒動を多くの人に見つめなおしていただきたいと思います。