救急車の不適切利用とかコンビニ受診について医者として思うこと

救急車の適切な使用と救急外来の適切なかかり方の問題

医者をしているといろんな世の中にはいろんな人がいるんだなぁと感じます。

近年、救急車の不適切利用だとか、救急外来のコンビニ受診だとか、患者側のモラルを求める問題がたびたび指摘されています。

しかし世の中にはいろんな人がいることを知れば知るほど、患者さん側のモラルを求めることが問題の解決につながるとは到底思えなくなってきた今日この頃です。


ひどい人はひどいけれど、わかってくれている人はわかってくれている

当直で夜中の三時に、「先生眠れないんで薬くださいって人が来てます」って起こされるとかあります。

安定剤がなくなったから薬を処方してもらおうとして救急車呼んでやってくる人とかもいます。

夜中の当直中にやってきて、診察はしなくていいから薬だけ出せ!という人もいます。

しかし、一番の問題はそういった人たちが存在することではなく、医療の現場に対して理解を示してくれている人たちが被害者になっていることだと思うのです。

たとえば「救急車は安易に呼ばない方がいいと思って」といって、痛みをこらえてふらふらになって病院に来る人が実際にいます。

また、「夜に病院にかかるのは申し訳ないから」といって朝になって症状がひどくなってから病院に来る人が実際にいます。

明らかにモラルがないという人がいる一方で、必要以上に遠慮してしまって我慢している人がいるのは事実です。

モラルを求めることでモラルのある人だけが我慢している

近年では、コンビニ受診はやめよう!とか、軽症で救急車を呼ぶのはやめよう!という声が広がっています。

しかし医療の現場で働いていると、いくらそのようなことを広めようとしても、おそらくこういった問題はゼロにはならないのだろうなと感じます。

もともとそういうことに関して理解のあった人は、余計に遠慮してしまって病院に簡単にかからないように我慢してしまうようになっています。

そしてもともと病院を受診することにモラルのなかった人たちには、こういった呼びかけはまったく届いていないように思います。

むしろ届いているのかもしれませんが、もともとそういうことを気にしてくれるような人ではないのだと思います。


今の日本には病院のかかり方に関する定まった道筋がない

なんでこんなことになっているのか考えてみると、今の日本にはどのように病院にかかるかに関しての決まった順序はありません。

基本的にはどんな症状であっても、どんな病気であっても、何も決まりはないので患者さんが自分で考えて病院を選んでかかるしかありません。

ある意味自由と言えますし選択肢が広いと言えますが、逆にいうと患者さんが自分で決めなくてはいけない部分が大きいとも言えます。

そのために受診の仕方が多様化しているのが根底にあり、その一部としてコンビニ受診や軽症での救急車の利用などが出てきて問題視されるようになってきているわけです。

受診するほうのモラルの問題なのかと考えると、一方で現在の受診のシステムが病院にかかりたいと思った人を適切な道筋で病院に誘導できていないとも言えます。

逆に言うと、モラルがない人が無理やり不適切な道筋で病院にかかれてしまうとも言えるわけです。

悩みます

根本は適切な受診誘導システムがないこと

そのような状況で病院受診に対してモラルを求めて、もともと理解のあった人たちが遠慮してしまう構図は望ましくありません。

たとえばtwitterなどで医療者がモラルのない患者のエピソードを挙げて批判して、いろんな方面から同意されて拡散されていくのをよく見かけます。

個人的には、こういったことは遠慮すべきでない人たちに遠慮させてしまうだけで、あまり期待するような目的は達成できないのではないかと思います。

おそらく根本の問題としては、受診したいときに適切な方法で病院に誘導してもらえるようなシステムがないことなんだと思うのです。

これはこれでまた難しい問題ですが、近年そういった相談の窓口もできてきていますので、今後定着することを期待しています。

一応その一例を挙げますと、例えば東京都では24時間対応で#7119の短縮ダイヤルで、救急車を呼ぶべきかどうかの相談ができます。

まだまだあまり知名度がないようですし、これだけで問題の解決にはならないとは思いますが、今後こういった窓口の機能を充実させていくことが日本の医療の課題の一つなのではないかと思います。

まとめ

救急車の不適切利用や救急外来のコンビニ受診はなくなってはいません。

受診する側にモラルを求める声が上がっていますが、一方で受診を適切に誘導するシステムも必要だと思います。 真面目な人が損をするような医療であってはならないと思います。