紹介状をもらうだけの受診は可能?大病院初診時の紹介状の意味

外来をやっていて悩むことがあるのが、「大きい病院に行くにあたって紹介状が必要と言われたので、紹介状を書いてほしくて来ました」というケースです。
最近では大病院で紹介状がないと初診料が高くなるといったニュースもあり、今後もこういった受診は増えていくのだと思います。
しかし、中には診察や検査なしには紹介状が書きようがないというケースで困ることもあるので、それについて書きたいと思います。
大病院の受診で紹介状を必要とする理由
大病院が初診時に紹介状を持ってこさせようとする理由はいろいろあります。 その一つとしてまず挙げられるのが、大きな病院に来る専門的な治療や検査が必要でない患者さんが多すぎる現状が挙げられます。
とりあえず大きな病院ならば安心だからという考えで、なんでもかんでも総合病院や大学病院にかかる人が多いのはいまだに問題となっています。
本当に専門的な治療を必要とする患者さんのために、医療資源を確保しておかなくてはならず、適切な医療を適切な患者さんに配分するためのシステムが必要とされてきました。
そこで、かかりつけ医やクリニックのレベルで専門的診療の必要性を選別するというのが、初診時に紹介状を義務づけることの目的の一つです。
紹介状があると診療がスムーズに行われる
初診時の紹介状のもう一つの意味としては、診療時にかかる時間や無駄な検査を減らすことが挙げられます。
医療機関側からすると、初診というのは二度目以降の再診に比べて非常に時間がかかります。 患者さんのこれまでの病状について詳しく聞き取りを行い、医学的に重要なポイントを抜き出して整理しなくてはいけません。
今現在患者さんにとって何が問題なのか、何を調べなくてはいけないのか、をピックアップすることはとても大切なことです。
そしてそれは同時に、診療の中で多くの時間をかけなくてはいけない重要なステップです。
かかりつけ医やクリニックのレベルで、患者さんの問題点をあらかじめ抽出し、紹介状に記載することで、引き続きの診療をスムーズに行うことができるのです。
前医での検査結果があれば繰り返しの検査を避けられますし、細かい過去の情報が次の医師に伝達されることは、なにより診療を受ける患者さんの利益につながります。
質の高い医療を受けるためには質の高い紹介状をもらうことが必要
つまり、医師が大病院に対して紹介状を書く際には、今現在患者さんが持っている医学的な問題点をピックアップし、専門的な治療や検査が必要かを判断した上で書くということになります。
そこで困るのが、初めて会う患者さんで「検査とかはしないでいいので紹介状だけください」というケースです。
話を聞いただけで明らかに専門的な検査が必要だというケースもないわけではないですが、しっかり診療をした上でないと紹介状を書けないケースも多々あります。
たとえば、最近お腹が痛いので大きな病院で検査を受けたいので紹介状をくださいという患者さんがいらっしゃいます。
お腹が痛いといっても、医学的な診察、お腹のレントゲンや採血検査などの初期的な検査で、どのような原因が考えられ、どれくらい緊急性があるのかを判断する必要があります。
消化器外科医による手術までできる病院のほうがよいのか、患者さんが行きたいといっている病院で本当のそこまでの診療が可能なのかを判断しなくてはいけません。
さらに場合によっては、腹痛であっても泌尿器科や婦人科の方が適している場合もあります。
つまり、紹介状だけくださいという受診であっても、医者にとってはその「紹介状を書く」という行為の中に、初期的な診療をして医学的な問題を把握することが求められているわけです。
そしてなにより、紹介状を書く上で初期的な診療をして問題を正確に把握することは、患者さんにより適切な医療を受けてもらうために非常に大切なことなのです。
まとめ
紹介状を作るためには、医者にとっては初期的な診療によって医学的な問題をしっかりと把握するという行為が求められます。
紹介状だけほしいという場合には診察や検査は煩わしく感じられるかもしれませんが、患者さんを適切な病院へ紹介するために非常に大切なことであるとご理解いただければと思います。