風邪薬や花粉症の薬を飲んだら眠気がなくても運転を控えるべき理由
風邪薬や花粉症の薬は副作用として眠くなるので自動車の運転をしてはいけないといわれています。
これらの薬の多くは抗ヒスタミン薬を含んでいるため、その副作用として眠気が出る可能性があります。
実際のところ、こういった薬を飲んだ際にすべての人が運転をきちんと控えているわけではないのが事実だと思われます。
しかしなにより注意しなくてはいけないのは、薬を飲んだ場合にはたとえ本人が眠気が出てないから大丈夫だと思っても、気づかないうちに判断力が落ちていて事故につながる可能性があるという事実です。
ここでは風邪薬や花粉症の薬である抗ヒスタミン薬の副作用の危険性について、あらためて説明したいと思います。
風邪薬や花粉症の薬を飲むと本当に事故を起こしやすくなる?
調べてみると少し古いですが、実際に運転手の風邪薬の服用による事故のニュースも見つかります。
バス運転手の意識喪失起因の事故で特別監査を実施 | レスポンス
運転手は収容先の病院でインフルエンザと判断されたが、後の調べで乗務前に風邪薬を服用していたことが判明。これが原因で眠気を催したものとみられている。
実際には体調が悪いことによる影響も否定できないので、事故を起こしたのが本当に飲んだ薬のせいなのかどうかを調べることはできません。
しかし、そういった多くの薬の添付文書には運転を控えるよう記載がありますし、運転をする必要があるのであればそのような薬を飲むべきではないのは事実です。
薬を飲んでも眠気が出てなければ大丈夫なんじゃないの?
風邪薬や花粉症の薬を飲んだ際に知っておかなくてはならないのは、たとえ眠気が出てこなくても気づかないうちに注意力が落ちていることがあるという点です。
この気づかないうちに集中力や判断力が低下することを、インペアード・パフォーマンス(impaired performance)といいます。
実際に健康な男性にポララミン(クロルフェニラミン)を飲んでもらって自動車運転シュミレーションシステムで模擬運転をしてもらった研究では、この研究における内服量ではポララミンの内服で眠気の自覚は変わらなかったものの、蛇行運転が増えたという結果(参考文献1)が報告されています。
薬の副作用自体、個人差が大きいものですので、限られた結果をすべての人に当てはめるわけにはいきませんが、つまり眠気を感じないから運転しても大丈夫ということはまったくないわけです。
最近の抗ヒスタミン薬は副作用が少ないって言われてるけど?
最近の抗ヒスタミン薬は、改善されて眠気の副作用が出にくくなっているため、中には添付文書に眠気に関する副作用の記載はあるものの、自動車の運転に関する注意が記載されていないものもあります。たとえばアレグラやクラリチンといった薬がそれにあたります。
アレグラは病院を受診しなくても、薬局で購入可能であり、嵐の大野君を起用したCMで最近注目されている薬でもあります。
アレグラはインペアード・パフォーマンスを起こしにくいといわれています(参考文献1,2,3)が、それでも眠気の副作用の報告もあり、運転しても大丈夫とは言い切れません。
さらに、眠気の少ないとされるザイザルという新しい抗ヒスタミン薬がありますが、こちらはアレグラよりも鎮静作用が少ないと評価されている(参考文献3)一方、添付文書には運転に関する注意書きがしっかりと記載されています。
私は抗ヒスタミン薬を処方した場合には、たとえ眠気の少ないとされる薬で、たとえ患者さんは眠気を感じていなかったとしても、自動車の運転はさけるべきと説明しています。
まとめ
最近の副作用の少ない抗ヒスタミン薬であっても、眠気を引き起こすことがあります。
また、薬の副作用で眠気が出なくても、気づかないうちに集中力や判断力が低下することをインペアード・パフォーマンスといい、これによって事故が起こり得ます。
こういった薬を飲む際には十分注意しましょう。
参考文献1) 谷内一彦ら 鼻アレルギーフロンティア 9(1):58-64,2009.
参考文献2) 佐野真 PROGRESS IN MEDICINE 27(8):1821-1824,2007.
参考文献3) Kathleen McDonald et al. Hum. Psychopharmacol Clin Exp 23:555–570,2008.