診察室で病状を説明するときに注意するべき言葉を並べてみた

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診察室で診療をしていて感じるのですが、一つの言葉が人や場合によっていろいろな意味に受け取れるため、診察室の会話には注意しなくてはいけない点が多々あるなと思います。

同じ言葉であっても、患者と医者でそれぞれ使っている意味が違ったりすることがあり、お互いに注意が必要だといつも感じています。

症状の説明のための表現方法はさまざまであり、そういった言葉を使うべきではない!などと言うつもりはまったくないのですが、実際のところ曖昧な表現に対しては医者側から聞き返す回数が増えたり、その結果病状を把握するのに時間がかかったりします。

それでは、診察室で医者からの視点でわかりにくいと感じる言葉とはいったいどんな言葉なのか、ここで並べてみようと思います。


「ちょっと」「少し」

時間や程度を説明するときに「ちょっと」とか「少し」という言葉を使う人が多いですが、自分のことを相手に説明するときには使うのを避けたほうがよい言葉です。

たとえば、「いつごろからですか?」の問いに「ちょっと前からです。」と答える人がいますが、これでは必要な情報が何も伝わりません。

「ちょっと」や「少し」という表現は実のところとても主観的な表現なので、たとえば「ちょっと前」や「少し前」という言葉があらわす時期は、人によって数秒前、数十分前、数時間前、数日前、数ヶ月前と大きく幅があります。

診察室で「ちょっと前からです。」と答えても、「それは具体的にいつからですか?」と聞き返されてしまうと思います。

客観性を持って相手に自分のことを説明する必要がある場面では、「ちょっと前」という言葉はほとんど意味を持ちません。

「ここ最近」

「ここ最近」は上の「ちょっと前」「少し前」と似ています。

「いつからですか?」の問いに対して「ここ最近です。」と教えてくれる方がいますが、これでは実際のところ何もわかりません。

「ここ最近」は、数日なのか、数週間なのか、数ヶ月なのか、場合によっては数年を示す場合にも使えてしまいます。

ですから、正確に自分の病状を伝えたい場合に、なるべく使うべき言葉ではありません。

「ここ最近」という言葉を聞いたら、詳しく具体的な時期を確認させていただいております。


「調子が悪い」「具合が悪い」

「調子が悪い」とか「具合が悪い」は診察室でよく聞かれる言葉ですが、病状を説明するにあたってあまりいい言葉ではないと思っています。

「どうされましたか?」の問いに対して「三日前から調子が悪くて・・・」とか、「昨日の朝から具合が悪いんです。」とかいった返答は、一見病状をきちんと説明しているようですが、実はほとんど内容が相手に伝わっていません。

「具合が悪い」、「調子が悪い」という表現は、具体的な症状を示す言葉ではないので、それだけでは必要な情報は相手に伝わりません。

大切なのは、なぜ「具合が悪い」と思ったのか、なぜ「調子が悪い」と感じたのかという内容を医者に伝えることです。

たとえば「三日前から頭が重くて、だるくて・・・」とか、「昨日の朝から食欲がないんです。」といった表現であれば、病状の内容がきちんと相手に伝わります。

病院に来ている人はほとんどみんな何かしら「具合が悪い」または「調子が悪い」から来ているわけで、「具合が悪い」や「調子が悪い」という言い方だけでは、なぜあなたが病院に来たのかが伝わらないのです。

「すごく」「すごい」

「すごく」「すごい」という言葉も主観的であると同時に、人によって表現している程度に大きく幅がでるので、聞き手としてはわかりにくい部類に入る言葉です。

「すごく痛い」ならば、強い程度の痛みなのだなというイメージがなんとなく伝わらないこともないのですが、「すごい前から」という表現では、それがどれくらい前なのか幅がありすぎて伝わりません。

他によくあるパターンとしては、「どのような痛みですか?」の問いに「すごく痛い感じです」と答えが返ってくることがあります。

これは「どのような痛みですか?」の問いに医者が期待している答えとして、「刺すような痛み」とか「締め付けられるような痛み」などの性状を聞きたいのですが、「すごく痛い感じ」などといった漠然と強い程度を示すだけの答えが返ってくることが少なくありません。

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「突然」「急に」

「突然」や「急に」などの変化の急激さを示す表現も、人によって示す状態が異なるので注意しています。

たとえば「突然の頭痛」というのはくも膜下出血などの症状である可能性があり、「突然の頭痛」というだけで医者は身構えるのですが、医者と患者で「突然」の意味が違うケースがあります。

これらの言葉は急激さを表現するために必須だと思われますが、大きく2通りの意味があり、人によって場合によって使っている意図が違うことがあるので、医者も患者もお互いに注意する必要があるように思います。

2通りというのは、①それまでゼロであった症状がある瞬間、ある一点で出現する経過を「突然」と表現されることがあるパターンと、②一定の時間をもっているけれども短い時間の中でゼロから症状が徐々に増えてくる経過が「突然」と表現されるパターンです。

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この両者は似ているようで大きく異なり、医学的にこの二つの意味を区別することはとても重要です。

ですので、「突然」「急に」といった言葉を聞いたときには、必要以上にしつこく聞こえるかもしれませんが、正確な意図する内容を確認させていただいております。

「熱がある」「熱が高い」

「熱がある」とか「熱が高い」という言葉も、患者さんそれぞれで意図する内容が違います。

「熱が高い」とおっしゃるので具体的な体温を尋ねると、体温が38℃を超えている人もいれば、「36.8℃でした、自分は普段体温が低いので、これは高いほうなんです。」という人もいます。

なかには「熱がある」といいながら、実際には体温を測定していなくて「熱っぽい感じがある」ことを「熱がある」と表現する人もいます。

ですのでこのような言葉を聞いたときには、「体温を計りましたか?具体的に何度でしたか?」と必ず確認をさせていただいています。

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まとめ

病状説明をする際には、より正確にご自分の症状について医者に説明することが何より大切です。

誤解を避けるために言っておきますが、上記に並べた言葉を絶対に使うべきではないというわけではありません。

ただ、言葉によっては自分の思ったとおりに伝わらないものがあるため、患者も医者もお互いに注意することが必要だと感じています。

ちなみに上記を見ていただくとわかるかと思うのですが、「今日はどうされましたか?」の問いに対して「ここ最近ちょっと調子が悪いんです。」という答え方を聞くと、医者は「この患者さんの問診は時間がかかりそうだな・・・」と身構えることになります。