点滴の中身っていったい何?何のために点滴をするの?

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よく、風邪でつらいので早く治るように点滴をしてください、とおっしゃる方がいらっしゃいます。

また、最近調子が悪くて、以前点滴をして調子がよくなった経験があるから、点滴をしてほしいといって来る方もいらっしゃいます。

しかしながら一般的に行われている点滴剤の中身は、水分にナトリウムなどの電解質を加えたもので、風邪を治したり調子を良くしたりするような効果はありません。

ここでは、そのような点滴について詳しく説明したいと思います。


まず、点滴って何?

まず点滴とはそもそも何かというはなしから始めましょう。点滴とは血管の中に管を固定して、投与するべき薬剤の袋を管でつなげて高い位置に固定し、重力を利用して徐々に血管の中に投与していく方法のことです。

もう少しくだいて言いますと、点滴は、直接血管の中に液体状の薬を入れていく方法のことです。それも注射器の注射のように一気に打ち込むのではなく、薬剤の袋を高いところにぶら下げて、重力を利用してゆっくりと入れていく方法です。

「点滴」という決まった成分の薬であるというわけではなく、点滴という言葉自体は「血管に管を固定して薬剤を投与する」という方法を指します。

点滴を行う際には、一般的には腕の静脈に細い管をいれて固定します。

採血では肘の静脈を刺すことが多いですが、点滴の細い管を肘に入れると、肘を曲げたときに薬剤の流れが止まってしまうので、基本的には肘を曲げても大丈夫なように前腕(ひじ〜手首までのあいだくらい)の静脈に管を固定します。

点滴は血管の中に直接薬を投与することができるため、口から薬を飲めない場合や、緊急事態で口から薬を飲んで胃や腸で吸収されるまで待っていられないような場合に必要となる方法です。

また、薬の種類によっては、点滴でないと投与できないような特殊なものも存在します。

点滴ってなんのためにするの?

点滴をする目的というと、大きくわけて3つあります。「水分および栄養補給」「薬剤投与」「薬剤投与の備え」です。

以下、ひとつずつ見ていきましょう。

水分および栄養補給

まず、点滴を行う大切な目的の一つとして、水分および栄養補給が挙げられます。

これは、主に何らかの理由で口から水分と栄養を補給できない場合や、速やかな水分と栄養の補給が必要な場合に行われます

例えば、水を飲んでも吐いてしまうような場合、腸の病気でご飯を食べてはいけないような場合などに、口から水分と栄養を採る代わりに、血管の中へ直接水分と栄養を入れるわけです。

ただし、通常の点滴では前述のように腕の静脈に管をいれますが、カロリーの高い点滴をそういった細い静脈に入れると静脈炎を起こしてしまうため、通常の点滴で投与できるカロリーはとても少ないものです。

長期にわたって口から食事を採れないような場合、栄養補給のために高カロリーの点滴が必要になりますが、そのような場合には腕の静脈からではなく、中心静脈といって大腿静脈、内頚静脈、鎖骨下静脈などの太い静脈に、管を留置します。

中心静脈に点滴の管を入れる場合には、皮膚の消毒や局所麻酔などを行う必要があり、また使う管も太く長い特別なものになり、出血などの手技の合併症の可能性もでてきます。

また、熱中症のように脱水状態があり、早急に水分や電解質を補正する必要がある場合にも点滴が行われます。

薬剤投与

点滴のもう一つの目的は、薬剤を投与するためです。

治療薬の中には、飲み薬が存在せず、静脈から投与する形態しかないものもあります。そのような薬は、点滴の管を通して血管に直接投与します。

また、前述のように何らかの理由で口から薬を飲めないけれども薬を投与しなくてはいけないという場合にも、点滴によって必要な薬を投与することになります。

吐いてしまうとか、腸の病気の場合もそうですが、本人の意識がないような場合なども、点滴から薬を投与することが必要になります。

薬剤投与の備え

救急外来などにかかったことがある方は、点滴の管をいれたことのある方が多いかもしれません。

すぐに薬剤を投与する必要がなくても、薬剤を投与するかもしれない場合に、前もって点滴の管を入れて薬剤の投与ルートを確保しておくというケースです。

なんらかの症状があって救急車で運ばれた患者さんに対しては、医療者は常に急変する可能性を考えて行動しています。

突然けいれんしたり、意識がなくなったり、急に不整脈が出たり、という可能性を考えて、あらかじめ薬剤を投与するために点滴の管をいれます。

この場合の点滴の中身は薬ではなく、水分補給につかうような水分に電解質を混ぜたものをつないでおくだけです。

「このまえ救急外来で点滴してもらいました」という患者さんの多くが、実はこの「つないでおくだけ」の点滴だったりします。


点滴の中身は何が入っているの?

一般的な点滴というのは、最初に述べたように水分に電解質を混ぜたものです。点滴といっても特殊な抗がん剤の点滴などもあるわけですが、ここではそういった特殊な薬の話はおいておきます。

この「水分に電解質を混ぜたもの」は水分補給で使われたり、薬剤の投与ルートの確保のために使われたりします。

具体的な成分を例を挙げてみてみましょう。

ラクテックという点滴剤があります。乳酸リンゲル液とも呼ばれます。

ラクテック500 ml中に入っているのは

  • 塩化カルシウム水和物 0.1 g
  • 塩化カリウム 0.15 g
  • 塩化ナトリウム 3.0 g
  • L‐乳酸ナトリウム 1.55 g

です。(大塚製薬 ラクテック添付文書より)

電解質の濃度に書き換えると、ナトリウムイオン 130 mEq/L、カリウムイオン 4 mEq/L、カルシウムイオン 3 mEq/L、クロライドイオン 109 mEq/L、 L-乳酸イオン 28 mEq/Lという具合です。

食塩水にカリウムと乳酸を少量溶かした成分ともいえます。

ラクテックは等張性電解質輸液と呼ばれる点滴剤のひとつで、血漿とナトリウム濃度が近く、出血や脱水などの際に失われた水分や電解質を補給する目的で使われます。

ちなみに少量のブドウ糖を加えたラクテックDというものもありますが、これは上の成分に25 gのブドウ糖を足したものです。(大塚製薬 ラクテックD添付文書より)

ラクテックDではカロリーにして100 kcalが加えられています。100 kcalというと、ご飯をお茶碗半分くらいのエネルギーです。

もうひとつ点滴剤の例をあげてみます。ソルデム3Aという点滴剤があります。

これの成分は、500 mlあたり

  • ブドウ糖 21.5 g
  • 塩化ナトリウム 0.45 g
  • 塩化カリウム 0.745 g
  • L-乳酸ナトリウム 1.120 g

となります。(テルモ ソルデム3A添付文書より)

電解質の濃度に書き換えると、ナトリウムイオン 35 mEq/L、カリウムイオン 20 mEq/L、クロライドイオン 35 mEq/L、 L-乳酸イオン 20 mEq/Lとなり、カロリーは86 kcalとなります。

ソルデム3Aは先ほどのラクテックよりナトリウム濃度が薄く調整されていますが、1日に生体が必要とする水分量を投与すると、その他の電解質も必要量になるように調節されていおり、ソルデム3Aは維持液と呼ばれる種類の点滴剤の一つです。

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風邪に点滴は効かないの?

風邪で点滴をしてくださいという方がいらっしゃいますが、残念ながら点滴では風邪は治りません。

上に挙げたように、水分に電解質を加えた程度のものを血管内に投与しても、風邪を治す効果はありません。

点滴の中には細菌をやっつける抗生物質の点滴もありますが、多くの風邪は細菌ではなくウイルスによって引き起こされるもので、ウイルスに対しては抗生物質の点滴も効果はありません。

以前は風邪にビタミン剤を点滴していたこともあったようですが、現在では風邪の治療にビタミン剤は効果がないことが証明されており、そのような点滴は行われなくなりました。

点滴が必要なのは、食事や水分が採れなくて脱水となってしまっているような場合に限られます。

逆に口から食事や水分が採れるのであれば、腕に針を刺す痛いことをしてまで点滴をする利益はないともいえます。

まとめ

点滴とは血管内に管を入れて薬剤などを投与する方法のことです。

点滴をする目的には、「水分および栄養補給」「薬剤投与」、「薬剤投与の備え」があります。

一般的に水分補給や薬剤投与ルートの確保を目的とした点滴は水分に電解質を加えた程度のものしか入っていません。通常の腕から行うような点滴では栄養補給も微々たる量しかできません。

そして、現在存在する点滴には風邪を治すような効果はありません。

点滴に対して、特別な万能薬のようなイメージを持つのは、残念ながら間違いということになります。

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おまけ

ちなみにスポーツドリンクとして有名なポカリスエットの開発時のコンセプトは「飲む点滴」だそうです。

ポカリスエットの電解質濃度を見てみると、ナトリウムイオン 21 mEq/L、カリウムイオン 5 mEq/L、カルシウムイオン 1 mEq/L、マグネシウムイオン 0.5 mEq/L、クロライドイオン 16.5 mEq/L、 L-乳酸イオン 28 mEq/L、クエン酸イオン 10 mEq/Lとなっています。

ポカリスエットには多くの電解質が含まれていますが、ナトリウムイオン濃度で考えると、上に挙げた維持液であるソルデム3Aに近いともいえるかもしれません。