健康診断で尿酸値が高いといわれたら何科?|高尿酸血症の原因と治療について
健康診断で尿酸値が引っかかったという方、けっこう多いのではないでしょうか。
尿酸値が高いまま放っておくと、関節が腫れて痛くなる「痛風」や、さらには尿酸が結晶化して腎臓に蓄積し腎臓の機能が悪くなる「痛風腎」などの合併症が起きる可能性があります。
「いつも尿酸値で引っかかるけれども、何も困っていることはないし、毎年引っかかるから気にしていません」という方がいらっしゃいますが、それは一番危ない考え方です。
では、尿酸値が高い場合には、どこへいって相談すればよいのでしょうか。
尿酸値が引っかかったらまず内科
結論から言ってしまいますと、健康診断で尿酸値が引っかかったらまず内科です。
尿酸値が高いという場合には、まずなぜ尿酸値が高いのかということを病院で確認することから始まります。
尿酸値が高いことを高尿酸血症と呼びますが、高尿酸血症状は採血での血液の中の尿酸の値が7.0 mg/dLを超えるものと定義されています。
この基準値よりも高い場合には、すべての人が健康診断の結果で高尿酸血症になることになりますが、当然ながらすべての人が同じ原因で尿酸値が高くなっているわけではありません。
尿酸はからだの中でプリン体という成分から作られます。プリン体は旨みの成分であり食物全般に含まれますが、特に肉や魚介類、ビールなどに多く含まれることが知られています。
そのため、尿酸値が高くなる原因で一番多いのは、バランスの乱れた食生活によって、プリン体を含む食品を普段から多く摂っているケースです。
しかし尿酸値が高くなる原因はそれだけではありません。一部の薬剤でも副作用で尿酸値が高くなりますし、腎臓が悪くなって尿酸を排泄できない場合にも尿酸値は高くなります。
また、脱水や飢餓によっても尿酸値は高くなり、一時的な変動となることもあります。
さらに、白血病、悪性リンパ腫、慢性骨髄増殖疾患などの血液の病気や甲状腺の病気でも、高尿酸血症となり得ます。
高尿酸血症を放っておくことは、異常値が出ているのにこれらの原因を調べずに放置してしまうことになります。
健康診断で尿酸値が引っかかったら、まず内科のクリニックを窓口にして、なぜ高尿酸血症となっているのか、ほかに問題となる異常はないのかどうかを確認してもらうことが大切になります。
では高尿酸血症は内科ならばどこでもよい?
結論から言うと、高尿酸血症に関して最初に相談する窓口としては、内科であれば大丈夫です。
しかし、多くのクリニックなどでは、「内科」だけを標榜しているところはかえって少なく、「消化器内科クリニック」だとか「内科・呼吸器内科クリニック」など、医師が専門とする内科の名前を並列しているところが多いのが実際です。
そして高尿酸血症のみを専門的に診る内科というものは存在しません。
そこで、そのようなたくさんの「~内科」の選択肢の中で、高尿酸血症を相談するならどこがよいのかを考えてみます。
あくまで個人的な意見と断っておきますが、生活習慣病から起こる高尿酸血症を多く診療していると考えられるのは、「腎臓内科」、「糖尿病内科」、「内分泌代謝内科」、「循環器内科」が挙げられます。
まず腎臓内科についてですが、尿酸値の上昇は腎臓の機能低下によって起こることがあり、尿酸と腎臓は切っても切れない関係にあります。
糖尿病内科はその名の通り糖尿病を専門として診療しています。しかし一般的に糖尿病内科を標榜しているクリニックでは、並存する高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病も一緒に診療する機会が多いといえます。
内分泌代謝内科はその名の通りホルモンの異常や代謝の病気を扱う診療科であり、生活習慣病である高血圧症や脂質異常症の治療を専門的に行う診療科です。尿酸値の異常も代謝の異常に含まれ、内分泌代謝内科は高尿酸血症も診療の守備範囲としています。
また、循環器内科は心臓や血管を専門的に診る内科ですが、心筋梗塞などの動脈硬化を原因として起こる病気を専門としているため、生活習慣病に関しても診療する機会が多い科といえるでしょう。
これらの内科はいずれも大学病院などの大きな医療機関での役割は専門に特化していますが、一般的な「腎臓内科」、「糖尿病内科」、「内分泌代謝内科」、「循環器内科」の開業クリニックは生活習慣病を守備範囲としており、高尿酸血症を相談する最初の窓口として適した診療科といえます。
また、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインを作成している日本痛風・核酸代謝学会では、認定痛風医という資格を設定しており、その認定痛風医名簿がホームページ上で閲覧可能です。
認定痛風医は大学病院に勤務している医師のほかに、一般開業医と思われる医師も並んでおり、高尿酸血症の相談先の選択の参考になるかと思われます。
高尿酸血症ではどのような治療をするの?
前述したような特殊な病気による尿酸値の上昇がないと確認され、生活習慣の問題による高尿酸血症であると診断された場合、治療の目的は痛風や腎障害などの合併症が起きないようにすることです。
まず、既に痛風を起こしたことがないか、腎臓の機能が既に悪くなっていないか、尿酸結晶による尿路結石、皮膚の痛風結節と呼ばれるコブがないかを確認します。
既に何らかの症状が起きているのであれば、それに応じた治療が必要になりますが、起きていない人でもそういった症状が今後出てこないように尿酸値を下げることが必要になります。
また、尿酸値が上昇するにつれてメタボリックシンドロームの頻度が高くなることが知られており、合併する生活習慣病がないかどうかをチェックしてもらうことも大切になります。
そして生活習慣を見直し、プリン体を多く含むアルコール飲料やカロリーの過剰摂取を避けた生活をすることが第一の治療になります。
生活習慣を修正しても尿酸値が9.0mg/dLから下がらないような場合、また尿路結石や腎臓の病気、高血圧症などの合併症があって尿酸値が8.0mg/dLより下がらないような場合は、薬によって尿酸値を下げることが推奨されています。
まとめ
高尿酸血症を放っておくと、痛風や痛風腎などの合併症に至る可能性があります。
相談の窓口としては、「内科」のクリニック、特に「腎臓内科」、「糖尿病内科」、「内分泌代謝内科」、「循環器内科」などのクリニックが適しているといえます。
高尿酸血症はメタボリックシンドロームと関連することが示唆されており、他の生活習慣病についてのチェックを受けることも大切です。
そして尿酸値が引っかかってしまったら、その機会は生活習慣の見直しのよいきっかけになります。ぜひ病院で一度相談してみてください。
参考文献)
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会
今日の治療指針2015年 医学書院
臨床検査データブック 2015-2016 医学書院