やけどの治療は何科が専門なのか?熱傷の治療をする診療科について
私は内科医ですが、高齢の患者さんが手に熱湯をかけてしまったと外来にいらっしゃったことがあります。
そのときは患者さんのやけどの部分は水泡もなく、お湯がかかった場所が赤くなっていた程度だったので、初期治療として冷やして軟膏を塗って、皮膚科に行っていただきました。
やけどの治療を専門的にやっているクリニックはどこか、というと、皮膚科や形成外科のクリニックになります。
ただし、やけどの中には入院や手術が必要になるものもあり、具体的にどのような診療科がどのような治療を行うのかについて説明したいと思います。
重症なやけどは何科?
まず初めに重傷なやけどから考えていきましょう。ひどいやけどで救急車を呼んだ場合です。
やけどを診察する場合には、医者はまず「どれくらい重症なやけどなのか」を考えます。
やけどがどれくらい重症なのかに関しては、「やけどがどれくらい皮膚の深くまでダメージを与えたのか」という点と「やけどの面積は全身の何パーセントに及ぶか」で評価されます。
一定条件を満たすような重症なやけどは、激しい全身の炎症によって脱水になってしまうので、点滴による治療や入院が必要になります。
具体的には、深いやけどの部分が全身の15パーセント以上であれば点滴治療が必要とされています。
こういった重症なやけどの治療を行う場合、まず救急科が診療にあたり、必要に応じて皮膚科や形成外科と連携していくことになります。
あまりに深くまでおよぶやけどの場合、皮膚が腐ってしまったり、自然治癒が起こらなかったりするので、手術による治療が必要になる場合もあります。
重症の場合、全身のやけどによって血圧が下がってショック状態になったり、敗血症になったりという可能性もあります。当然、命にかかわるようなケースもあります。
また、やけどの深さや面積がそれほどひどいものでなくても、顔面や呼吸にかかわる気道のやけどや、陰部にかかっているような場合は、やはり入院による治療が必要になることがあります。
ここで述べたようなやけどの場合には、救急車で総合病院などの救急外来に運ばれることになると思いますので、何科にかかるか悩むようなケースはほとんどないと思われます。
やけどの専門は何科?
上に述べたような場合ではなく、救急車を呼ぶほどではない場合を考えてみましょう。
たとえば指先をちょこっとだとか、足先をちょこっとだとか、そんなに広い面積ではないけれども、病院に行ったほうがよさそうだという場合、皮膚科または形成外科のクリニックが受診先として適しています。
以前下の記事にまとめましたが、皮膚科と形成外科は体の表面の傷の治療に関して専門で扱う診療科です。
皮膚科は、皮膚の異常を専門にみる診療科であり、やけどもその守備範囲に入ります。
大きな病院で、やけどの治療で植皮など専門的な手術を行っているのも皮膚科です。
また、やけどの治療に関して日本皮膚科学会が治療のガイドラインを発行しています。
一方、形成外科は身体のかたちの異常を治療する診療科です。
美容形成などのかたちを整える治療は形成外科の守備範囲の一つです。
やけどは小さい範囲のものであっても跡が残ったりすることもあり、いかにきれいにやけどを治すかは形成外科の専門になります。
皮膚科と形成外科は皮膚表面の治療に関しては、一部守備範囲がオーバーラップしているともいえ、やけどは皮膚科、形成外科のクリニックいずれでも診てもらえます。
また、近くに皮膚科も形成外科もない!という場合、整形外科などの外科系のクリニックであっても初期治療をしてもらえます。
入院や手術などを含めた専門的治療を必要としない程度のやけどであれば、そのような外科系のクリニックでもみてもらえます。
この場合、診察した医師が必要と判断すれば、専門的な診療科に紹介されることになります。
やけどをしたらまずどうする?
やけどの応急処置は、ひたすら冷やすことです。服を着ている部分であれば、着たまま水道水などで冷やします。
救急車を呼ぶような広い範囲のものでないのならば、そのまま20分ほど冷やし続け、その後病院に行きましょう。
また、やけどによって水ぶくれができることがありますが、水ぶくれはやぶれてしまうと感染の原因にもなるため、可能であれば水ぶくれはやぶらずに病院に行き、医師に処置してもらうことが推奨されます。
まとめ
重症なやけどは救急車を呼ぶことになりますが、救急車を呼ぶほどではないちょっとしたやけどであれば、専門は皮膚科または形成外科になります。
応急処置としてやけどの部分をよく冷やした上で、皮膚科または形成外科のクリニックでみてもらうのがよいといえます。
参考文献)
今日の治療指針2015年版 医学書院
熱傷診療ガイドライン 日本皮膚科学会
熱傷診療ガイドライン第2版 日本熱傷学会