その検索結果、信じていいの?Googleが医学情報に対して抱えるジレンマ

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2,3年ほど前までは、医学的な情報をインターネットで探そうとしても、なかなか信用できるような情報が検索の上位に表示されていなかったのですが、最近はだいぶ改善されてきているようです。

2015年にGoogleの検索品質評価ガイドラインが公開されて、GoogleがWebサイトをどのように評価して、どのように検索結果に表示される順位を決めているのか、が部分的ではありますが明らかになりました。

この検索品質評価ガイドラインのなかで、健康や資産、そして将来的な幸福などに直接関わる情報を記載しているページをYMYL(Your Money or Your Life)ページと名付け、より厳しくページの品質評価を行うと記載しています。

今現在の日本語の検索結果は、医学情報の正確性と検索結果の順位は必ずしも一致しているわけではありませんが、こういった厳しいページの品質評価法によって、情報の正確性と順位の相関がもっと高まっていくことが期待されます。

今日はその順位付けのアルゴリズムがもたらすGoogleの検索結果の問題点についてスポットを当ててみたいと思います。


Googleの検索結果のファーストビューを眺めてみる

医学情報をGoogleで検索する人の目的のほとんどは、自分がもっている病気や治療に関する疑問に対して、正確な医学知識にもとづいた回答を得ることだと思います。

しかし、検索結果で最初に目に飛び込んでくる部分(ファーストビュー)のほとんどは、広告で占められています。

広告であるという旨がリンクに提示されているものの、気づかずにクリックしている人がいるであろうことは容易に予想できます。

下の画像は、「胃がん 治療」というキーワードで、本日2016年2月16日にGoogleで検索した結果です。

Google検索には、個人の検索履歴などを用いて検索結果を調整して表示するのパーソナライズ機能がついているので、今回の検索時には検索結果のURLの末尾に「&pws=0」をつけて、この影響をできる限り排除しています。

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約771000件が検索に引っかかり、Googleの検索品質評価によって順位付けされて、上の画像のようにサイトへのリンクが並びます。

しかしよく見ると、下の写真のように赤い四角で囲った部分は、すべて広告です。

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冒頭で述べたような厳しいGoogleの検索品質評価によって、きちんと順位付けを受けたページは、ファーストビューには一つしか表示されていません。

ちなみにYahoo!もGoogleの検索エンジンのアルゴリズムを採用していることが知られています。そして検索結果のファーストビューも似たように広告で埋められてしまっています。

Yahoo!を使って「胃がん 治療」で同様の検索をしてみた結果が以下です。

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そして広告部分を赤い四角で囲うと以下のようになります。

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下記の記事によると日本ではGoogleとYahoo!で検索エンジンのシェアの9割以上を占めており、Yahoo!がGoogleの検索エンジンアルゴリズムを採用していることを考慮すると、ほとんどGoogleの一人勝ち状態であることがわかります。

いつの間にか日本もGoogle寡占! 検索エンジンシェア早わかり2015

検索エンジンと言えばGoogleの天下という印象があるが、果たしてその通りなのだろうか。各国の検索エンジンシェアと、日本における状況を見ていこう。

つまり、私たちがインターネットで検索して入ってくる情報は、病気や健康の情報まで含めて実質ほぼすべてGoogleの検索エンジンアルゴリズムに支配されている状況なわけです。

Googleが検索エンジンとして抱えるジレンマ

この検索結果に表示されている広告はすべて、広告主がGoogleに対してお金を払って掲載しているものです。

つまりこれらの広告のリンクは、Googleの検索品質評価ガイドラインによって厳しく吟味され、順位付けを受けたうえでそこに表示されているものではありません。

さらにいってしまえば、これらの広告のリンク先が「医学的に正しい情報かどうか」、「適切な専門家が携わっているかどうか」、はGoogleは適切に評価できていないわけです。

せっかく精度の高いアルゴリズムを作り上げて、インターネット上に散らばる膨大なサイトから、正確な医学情報を抜き出して検索者に提示できるようになったとしても、GoogleやYahoo!は検索エンジンによって利益をあげる企業である以上、そこに広告を載せざるをえません。

医療に関する広告については、現状ではすべてが適切なものであるとは言い難く、効果のない治療で不当な利益を得ようとしているものもないわけではありません。

その結果、「検索者に対して適切な情報を提示する」というGoogleの目的は、広告をクリックした一部の検索者に対しては達成できていない可能性があります。

Googleは、検索者のために検索品質評価のアルゴリズムをより精度の高いものに改善していく一方で、企業である以上、そこから利益を生み出さなくてはいけないというジレンマを抱えているのです。


Googleは検索エンジンから利益を生み出している企業である

一方で正確な医学情報の提供・拡散は、そこに関わる人件費などの経費を必要とするものであり、企業活動のような利益を追求する組織と提携することで、より効果的に広まるのも確かです。その具体例として逆流性食道炎のテレビCMがあります。

筧利夫さんがテレビCMで逆流性食道炎をゴリ押ししている理由

俳優の筧利夫さんが出演している逆流性食道炎のCMをよく目にします。 以前患者さんに、なんで最近急に逆流性食道炎のCMが出てくるようになったんですか?と聞かれることがあったので、それについて書きたいと思います。

いまの社会では資本主義が根本的なシステムとなっており、「正確な医療情報の拡散」という金銭的な利益につながりにくい活動は、企業が金銭的な利益を追求する活動と提携させることで、両方の活動にとって有益な、大きな成果に結び付けることが可能であることは間違いありません。

そういった意味で、Googleの医学情報に対する検索品質評価ガイドラインの確立は、それによって誰もが簡単に医学的情報を手に入れることができるようになったことを考えると、非常に大きな役割を果たしているといえます。

上の「胃がん 治療」の例では、さすがに広告の量が多すぎるとは思いますが、検索者側が広告を適切に広告だと判断することさえできれば、おそらく自分の求める情報にたどり着くことは不可能ではありません。(しかしいまの状況が検索者のことを第一に考えた形かというと疑問ではあります。)

つまり私たちは、Google検索は一つの企業が作り上げたものであり、その検索システムによってGoogleは利益を得ているのだということを認識した上で、この検索機能を使わなくてはなりません。

正確な医学情報の提供に関するGoogleの試み

はっきりいってしまいますが、Googleの検索結果において、医学情報の正確性と順位づけの整合性はまだまだ改善の余地がある状況です。

Googleの検索エンジンは医学情報の正確性を評価できないという問題

私がブログを書くようになって強く感じるのが、検索エンジンの順位付けは情報の正確性とは関係ないということです。これは特に医療に関する分野においては、情報を調べるときに知っておかなくてはいけないことだと思いますので、今日はこれについて書いてみたいと思います。

以前上記の記事にも書いたのですが、医師である私からみて、なんでこんな順位にこんなページが・・・みたいなケースは結構あります。さらにその検索結果に広告が表示されていて、どのリンクが信ぴょう性のある情報を提供しているのかとてもわかりにくいというのが今のGoogleの検索結果の状況です。

これにたいして「検索者に対して有益な情報を提供できているか」を追及しているGoogleの検索エンジンが、この現状を良しとするはずはありません。そこで、たとえば英語圏では検索結果のサイドに、専門家によって監修された医療情報を提示するサービスをずいぶん前から開始しています。

グーグル、「Knowledge Graph」で健康医療情報も提供へ

健康問題に関する質問がある読者は、グーグルを通して回答を見つけやすくなるかもしれない。

Google、病気に関するナレッジグラフを改良。対応する症状の数を2倍の900以上に | 海外SEO情報ブログ

病気や医療の情報を提供するナレッジグラフを今年の2月にGoogleは導入していた。健康状態に関わる検索が増え続けていることを受け、Googleは、この機能を改良した。改良の内容は、900以上の病気に対応・デザイン変更・PDFダウンロードの3つ。

このサービスでは、医療に関して検索をすると検索結果のページの右側に、専門家による患者さん向けの関連した情報が表示されるようになっています。

現状でこのサービスがない日本語のGoogle検索は、英語圏に比べるとだいぶ質の低いものだと思っておかなくてはいけません。このナレッジグラフによる医療情報の表示は、早急な日本語対応が期待されるサービスです。

検索アルゴリズムで正確な医学情報を提供することは不可能なのか?

Googleが上に挙げたナレッジグラフによる医療情報の提供を始めたことは、別の角度から考えると、いくら検索アルゴリズムの精度を上げても検索順位と情報の正確性は別物であり、検索結果に正確でない情報が混じる可能性を排除できないとGoogle自身が認めたととらえることもできます。

つまり冒頭で取り上げたGoogleの検索品質評価ガイドラインによる検索順位づけだけでは、検索者に対して正確な情報だけを選んで提供することが難しいと、Google自身が認めてしまった結果、少なくとも医学の領域に関しては検索アルゴリズムの精度向上の追及とは独立した方法に移行してきているわけです。

そうなると、Google検索を利用する検索者側としては、より一層Google検索の限界と不完全性を認識した上で、これを利用しなくてはいけないことになります。

しかもこれまで述べたように、今現時点での日本のGoogle検索の結果は、ファーストビューが広告でうまっている上に、専門家が監修した医療情報も表示されていません。

実際に医療情報に対する検索アルゴリズムの精度がどの程度のものかに関しても、以前より良くはなってきているとはいえ、前述のようにGoogle自身が限界を感じているであろうと思われるほどの精度です。

実際に、公的機関の病気に関する説明ページが下位のほうに埋もれていたり、よくわからないけれど読みやすくてボリュームのある民間療法のページがなぜか上位にいたり、というのをよく目にします。

今現在、どうやってGoogleの検索結果から正確な医学情報を抜き出すかを考えると、それはなかなか難しく、個人的には以前書いた下の記事のような方法が限界ではないかなと思います。

病気や治療の信憑性の高い情報をインターネットで検索する方法をまとめてみた

インターネット上で病気や治療のことを検索すると、様々なサイトが引っかかり、それぞれの情報が正しいのかどうかを判断する必要があります。 現時点で、googleの検索順位は医学情報の正確性とは関係なく、そのため検索上位だからといってその情報が正しいかどうかはわかりません。

少なくとも今の段階では、自分の健康に関わる問題をGoogleで検索する際には、そこに表示された検索結果に対して、細心の注意と十分な吟味が必要なのです。

今この記事を読んでくださっているような方は、インターネットの情報の扱い方には慣れているような方だと思われますので、この問題はあまり気にすることのないことかもしれませんし、いままでもあたりまえのことだと思われていたかもしれません。

しかしこの問題の怖いところは、たとえば今記事を読んでくださっているあなたのご家族が、もしインターネットにそれほど慣れていないようであれば、Googleの検索を使ってよくわからない民間療法の広告にだまされてしまう可能性があるということです。

まとめ

Googleは公開した検索品質評価ガイドラインの中で、健康に関わる情報はより厳格に評価すると述べています。

しかし、一方で英語圏では検索結果のサイドに専門家が監修した医療情報を提示するサービスを行っており、検索アルゴリズムによる医学情報の選別に関しては事実上、アルゴリズムだけでは不完全であることを認めてしまったとも受け取れます。

これによってGoogleというサービス全体における医療情報の信ぴょう性は増す可能性があります。しかし、逆に言えば「検索アルゴリズムは信用しないで」とGoogle自身が言っているわけです。

今の日本のGoogle検索の結果では、ファーストビューが広告でうまっている上に、英語圏で提供されているような専門家が監修した医療情報も表示されていません。

検索エンジンを利用するときに、自分の健康に関わる情報を調べる際には、これらのことを十分に認識した上で利用しなくてはいけません。