朝礼で倒れた人が病院にいくとどんな検査を受けるのか

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失神という言葉の正確な意味をご存知でしょうか。失神とは一時的に意識を失い、姿勢が保てなくなるものの、その後自然かつ完全に意識が回復する状態のことをいいます。

よく、学校などで朝礼の時に倒れて保健室に運ばれる人がいますが、あれも失神です。ただし、失神は放っておいて大丈夫なものと大丈夫でないものがあります。

失神した場合、その原因何なのかを確認しなくてはいけません。

ちなみによく「貧血倒れる」といいますが、世間でいうところの「貧血」と医学用語の「貧血」は意味が異なりますので、これについては

「貧血で倒れる」は間違い?朝礼でなぜ人は倒れるか

「貧血で倒れる」という言葉があります。よく、朝礼で倒れたりした人のことを貧血で倒れたということがありますが、これは「貧血」という単語が誤って使われていると思っています。「貧血」の本当の意味は?

を参考にしていただければと思います。 では、まず失神の原因を見ていきましょう。


① 心臓の異常によって起こる危ない失神心原性失神

まず、心臓の異常によって起こる失神が一番怖い失神です。命に関わる可能性があるため、入院の適応となります。

心臓の異常により、出て行く血液の量が充分ではなくなって、脳への血液が足りなくなってしまうことで失神します。

失神を起こす心臓の病気として、具体的には急性心筋梗塞不整脈心筋症(心臓の筋肉自体に異常がある病気です)、心臓弁膜症(心臓の中の逆流を防ぐ弁に異常がある病気です)などが挙げられます。

② 心臓以外の異常によって起こる危ない失神

たとえば、大動脈が中で裂けてしまう大動脈解離という病気や、エコノミークラス症候群という名前で話題になった肺塞栓症という病気でも、一時的に脳への血流が落ちて失神が起こり得ます。


③ 立ち上がったときに起こる失神起立性低血圧

通常は立ち上がると、全身の血管が締まってくれて、脳への血液が足りなくならないようにするのですが、その反応が不十分で失神してしまうものです。

下痢出血脱水などで血管の中の水分が少なかったり、一部の血圧の薬アルコールを飲んでいたりすると起こりやすくなります。

それ以外に神経の病気が隠れていることがあったり、糖尿病の人でも起きやすいといわれています。

④ 神経の調節異常で起きる失神神経調節性失神

ストレスによって神経の調節のバランスが崩れた結果、脈がゆっくりになってしまったり、全身の血管が緩んで血液が足の方にいってしまったりして、脳への血液が足りなくなって失神します。

ストレスとは具体的には、長時間同じ姿勢でいること(朝礼で倒れる人はこれにあたります)、恐怖(一般的な怖い思いのほか、血をみて恐怖を感じてしまうなども含まれます)、痛みなどがあります。

よく貧血で倒れるといわれますが、この神経の調節異常で起きる失神のなかの一つであり、正しくは血管迷走神経性失神といいます。

咳やくしゃみ、排便や排尿でも失神が起こるものがあり、これらも神経の調節異常で起きる失神のなかの一つで状況失神と呼ばれます。

また、頚動脈のところに神経のバランスの調節器がありこれが刺激されて起きる失神があり、これも神経の調節異常で起きる失神のなかの一つで頚動脈洞症候群と呼ばれます。

⑤ その他

他には、てんかんやヒステリーなどの脳や精神の異常でも失神のような状態になることがあります。

では、失神は何科にかかればよいのか

さて、失神した場合は、これらの原因が隠れていないかということを調べてもらわなくてはいけません。

まず何科にかかるのかということですが、救急車を呼んだ場合は当然ですが救急外来を担当している医師が対応することになります。

外来を受診するとすれば内科、その中でも循環器内科(心臓病を診る診療科)が優先順位が高い診療科として挙げられます。

ただし、失神の診察は一般的な内科医師であれば十分可能であり、細かい診療科名にこだわらず「~内科」と書いてあればきちんと診てもらえます。

ですので、循環器内科が見つからなくてもとりあえずは「~内科」にかかるようにしていただければと思います。

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失神で病院にいくとどんな検査を受けるのか

次に診察と検査の流れについて説明していきます。とくに病気のない若い人で、状況から明らかに④の血管迷走神経性失神だろうと考えられる場合には詳しい検査は行われないこともあるかもしれませんが、基本的には失神の検査は上に書いたなかでも危ない病気を念頭において行われます。

おそらく病院についているころにはもう症状はなくなっていると考えられますが(ずっと意識がなかったらそれは失神ではありません。失神とは一時的な意識消失をいいます。)、背景に心臓の病気や、失神を起こりやすくするような要因がないかを検査します。

具体的にはまず、医師は血圧や脈泊数を確認し、失神した状況を聴取します。失神を起こしやすくするような薬を飲んでいないか、アルコールを飲んでいないかなど誘引がないかを確認します。そして危ない病気が隠れていそうなサインがないか診察します。

さらに心電図(心臓の病気がないかチェックします)、採血(血がうすくなって貧血になっていないか、脱水になっていないかなどをチェックします)を確認します。

必要に応じて心臓の病気が疑われれば心臓の超音波検査や24時間心電図(ホルター心電図といいます)、てんかんなど脳の異常が疑われるのであれば頭のMRIの検査や脳波の検査など専門的な検査が追加されます。

ほかにも③の起立性低血圧や④の神経調節性失神が疑われるのであれば、それを誘発する検査(立位負荷試験やヘッドアップティルト検査)というものも存在します。

そして上記の①~⑤のどれにあてはまるのかを調べていくのです。 当然ですが、もし危ない病気がみつかればそれについての治療が行われることになります。

検査の結果、危ない病気が隠れていないということがわかれば、また失神してしまわないように予防することになります。

例えば、状況から考えて④の血管迷走神経性失神だろうと考えられたのなら、長時間の立ちっぱなしになることを避けて生活し、もし失神しそうになったら速やかに横になって頭への血液を保つように指導されます。

まとめ

失神は怖い病気が隠れていることがあります。もし失神したことがあるのならば、しっかりと医師にそのときの状況を伝え、一度検査を受けることをおすすめします。

参考資料)
日本循環器学会 失神の診断・治療ガイドライン 2014年3月11日、日本循環器学会HP閲覧、最新情報はhttp://www.j-circ.or.jp/guideline/をご確認下さい(医療従事者向け)