「症状」と「病気」の大きな違い|薬局で薬を買うときの注意事項
最近では病院で処方される以外にも、薬局で手軽に同じくらいの効果を持つ薬が手に入ります。 花粉症の薬などが良い例で、アレグラやアレジオンといった抗アレルギー薬は今だに病院でも処方されることがある薬ですが、処方箋なしで自分で薬局で買うことができます。
これらは処方箋医薬品以外の医療用医薬品と呼ばれます。 しかし、花粉症のような命に関わるような病気でないのであればよいですが、薬局で薬を自分で買う場合、なにに対して薬を飲むのかという点に気をつける必要があります。
「症状」に対して薬を飲むということには落とし穴がある
例えば、これは私の経験ですが、狭心症で胸が苦しかったので「救心」を飲んで様子を見ていたという患者さんがいらっしゃいました。
狭心症は心臓を栄養する血管が動脈硬化でつまりかけてしまうことで起こります。現時点では薬だけで対応するのは限られたケースのみであり、基本的には心臓カテーテルなどの専門的な検査で診断した上で治療方針を決定します。
心臓を栄養する血管の中でも大切な血管が細くなってしまっているのであれば、カテーテルで治療しなくては命に関わります。ですので、このケースでは、自分で薬を飲んで様子を見るのではなく、一刻も早く病院で診てもらうべきであったといえます。
薬を飲む前に病気の診断をうけることが大切です
私はこの場で「救心」が効く効かないを論じるつもりはありません。薬が効くか効かないかという問題以前に、このケースでは別の重大な問題があるからです。
その問題とはなにかというと、症状に対して薬を飲むというこの行動の中に、病気の診断という大切な作業がすっぽり抜けてしまっているのです。
「どうき」に効く、とか「息切れ」に効くとかいいますが、これら「どうき」や「息切れ」は症状です。病気の名前ではありません。
「どうき」は胸がどきどきすることを指しますが、心臓の病気の他に、血がうすくなる貧血でも起こりますし、甲状腺の病気でも起こります。
また、肺がカスカスになってしまう肺気腫でも起こり得ます。 「息切れ」にしても、同じく貧血や甲状腺、肺の病気で起こり得ます。
ほかにも熱が出ていたり、低栄養であったりといった全身の状態を変えうるような状況ででてくる症状です。
ですので、薬の治療を始めるまえに、どこが悪いから「どうき」がでているのか、なにが悪いから「息切れ」が出るのかを調べる必要があるのです。
どこが悪いかで治療方法や薬の種類は変わります
当然ですが、甲状腺の病気の治療と貧血の治療と肺の病気の治療はまったく異なります。
甲状腺のホルモンを抑える薬を飲んだり、貧血の改善のために鉄剤を飲んだり、肺の病気のために呼吸がしやすくなる薬をつかったり、といった感じです。
甲状腺のホルモンをいくら飲んだところで肺の病気は治りませんし、貧血も治りません。 ですので、原因を治すためには、最初に「病気の診断をうける」ということが非常に大切なのです。
中には検査など受けなくても、たまたま薬局で買った薬が病気に合って効くということもあるかもしれません。
しかし、この「病気の診断」というステップを飛ばしてしまっては、有効な治療となる可能性はぐっと下がるわけです。
診断なしに薬を飲むというのは、花粉症のような命に関わらない病気なら別に問題ないでしょう。しかし、命に関わるような病気の可能性がある症状に対して、診断なしで自分の判断で薬を飲むのは危険です。
まとめ
普段と違うような症状があったらまず病院で相談することが大切です。薬の治療を始める前には「病気の診断」が必須です。
「病気の診断」によって有効な薬を選ぶことで、良い治療を受けられる可能性が高くなるのです。
薬局で自分で薬を買う場合には、今あなたが困っている症状は診断なしで薬を飲んでしまってよいものなのかどうか、一度見直してみていただければと思います。