薬を飲みたくない人へ|なぜあの医者は薬を処方しようとしたのか

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外来で薬を処方しようとしたり、増やそうとしたりすると、「薬を増やさないでくれ」とか「薬は飲みたくない」という人が多いです。

気持ちは非常によくわかります。薬が増えていくとあまりいい気分でないのは、私も自分が薬を飲む側になって考えれば、同じ気持ちになることは間違いないでしょう。しかし、医者側も医学的に必要であるとの判断から薬を勧めているわけです。

患者さんと医者側で考え方がすれ違うことが多いのが、この薬を飲むか飲まないか」ということに対する考え方です。


なぜ薬を飲まなくてはいけないのか理由を確認する

高血圧や脂質異常症(コレステロールの異常のことです)などの生活習慣病に関しては、どういう人がどういう状態になったら薬を飲むべきというものが科学的な根拠にもとづいたガイドラインで定まっており、医師はそれに沿って処方をしています。

実際にはある程度は患者さんの希望にも沿って、薬を処方するかどうか考えることになりますが、おおよそはガイドラインに沿って薬の処方は行われています。

しかし、患者さんの強い希望で薬の処方を控えていても、さすがにこれは薬を飲んでもらわなくては患者さんが健康に過ごせなくなってしまうと判断するときがあるわけで、そのようなときに薬を飲むことに同意いただけないと困ってしまうわけです。

このような状況で薬を飲まないと選択することは、医学的に健康に関してリスクを背負うことになるということをご理解いただいた上で、ということになってしまいます。

しかし病院に来て診察を受けていただいたのに、単に薬を飲みたくないというだけで健康に過ごせなくなるリスクを背負ったままというのでは病院に来た意味がなくなってしまいます。

せっかく健康を気にして病院に来ていただいたのですから、せめてなぜ薬が必要といわれたのかという点についてはしっかりと理解していただきたいと思います。

薬を飲むモチベーションを探すことが大切

残念ながら医師は患者さんに薬を飲んでいただくにあたり、拘束力を持っていません。どんなに患者さんの健康にとって大切な薬であっても、ご本人が納得していただかなくては薬を飲んでいただくことはできません。

私はよく、その薬を飲む最終的な目的を患者さんに説明します。例えば、この薬は5年後に脳梗塞にならないことを目的に飲むんですよ、とか説明しています。それでも納得いただけない人もいらっしゃいますが、多くの方にはわかっていただけます。

患者さんのほうでも、薬を飲みましょうと言われたら、その薬を飲むことによる目標を設定するといいかもしれません。例えば、数年後にも元気で趣味のスポーツを続けているとか、入院しないで過ごしているとか、具体的に想像すると薬を飲むモチベーションにつながるかと思います。

特に生活習慣病の薬などは効果を実感することは難しいです。だからこそ、採血の結果に興味をもっていただいたり、将来の健康な自分の姿を想像したりすることが大切なのではないかと思います。


薬の増量は必ずしも病気が悪くなったというわけではない

また、薬の増量に関してですが、これには飲む飲まないに関することとは別に、注意する点があります。

血圧の薬にしろ、コレステロールの薬にしろ、ほかの薬にしろ、薬を飲み始める時は少ない量から始めていただきます。少ない量でも十分効くかもしれませんし、思わぬ副作用などもあるかもしれないからです。

ですので、基本的に薬の量というものはあなたに合った量まで、時間をかけて徐々に増やしながら調節していくことになります。ステロイド薬など、多い量から始めて徐々に減らしていくという特殊な例もありますが、多くの薬は少ない量から始めてちょうど良い量がわかったところで、その量を継続するということになります。

また、一部の薬では効き具合に合わせて処方のたびに量を変えていくものもあります。脳梗塞の予防薬である血液をさらさらにするワーファリンなどがそれに当たります。

つまり、薬が増えるということは必ずしも病気が悪くなったからというわけではないのです。薬を増やしましょうといわれたら、それがどうしてなのかをきちんと医師に確認するすることが大事です。

せっかく薬を飲んでいただいていても、効果のない量を飲んでも意味がありません。しっかりとあなたの健康に役立つ量を飲んでいただいて始めて薬というものは意味を持つのです。

医学的に必要だから薬が処方される

ほかの病院の医師のことについて「あの先生はすぐ薬を処方したがる」といった評判も耳にすることがありますが、医師にとって患者さんに納得してもらうというのは結構大変であることは間違いありません。

薬を一種類処方するしないで医師の給料にはほとんど影響はありませんし、勤務医だったらなおさら関係ありません。あくまで医学的に必要であると医師が判断したときに薬は処方されるのです。

薬が必要であるにも関わらず患者さんになかなか納得していただけないときに、面倒になって「じゃあ薬なしで様子を見ましょう」という医師だっています。それで患者さんとしても満足してしまうかもしれません。

しかし面倒であっても時間をかけて患者さんが納得するまで説明して薬を飲んでもらう医師と、面倒だからといって薬を飲んでもらうのをあきらめる医師と、どちらがあなたにとって良い医師でしょうか。

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まとめ

あなたが「薬を飲みたいか飲みたくないか」も重要ですが、病院に来ていただいている以上「薬があなたの健康にとって必要か必要でないか」も大切なのです。

薬の処方に納得がいかない場合は、そのような視点を持っていただい上で、主治医とよく相談していただければと思います。