切り傷や擦り傷などの怪我は何科にかかればよいのか
よく、切り傷や擦り傷で内科にいらっしゃる方がいます。簡単な処置はできないわけではありませんが、私は内科医なので外傷に対して医学的責任を負えといわれると正直厳しいところです。
内科医だって傷縫えるでしょ?と言われるかもしれませんが、そもそも小さい内科のクリニックなどでは、傷の縫合器具自体がなかったりします。
では、一般的な「傷」は何科にかかればよいのでしょうか。
手足の怪我の専門は整形外科
皆さん意外とご存知ないのですが、病院に行かなくてはと思うくらい深い傷であれば、手や足、そして関節の怪我の専門である整形外科が一番好ましいといえます。
特殊な例だと、顔面だと形成外科医が専門であったり、目の怪我であれば眼科医、鼻の中だったら耳鼻科医、口の中だったら口腔外科医が専門になります。
また、表面の傷をきれいに治すということに関していえば、一番の専門は形成外科となります。
包丁で指を切ったとか、転んで深く擦りむいてしまって血が止まらないとか、そういった体の表面の怪我は整形外科でなくても「~外科」や皮膚科であれば、いずれも傷を縫ってもらうことはできます。
それほど深くはない表面の怪我ということに限定していえば、形成外科や皮膚科のほうが適しているかもしれませんが、これについては下記もご参照いただければと思います。
怪我した傷をきれいに治すために病院にかかりたいという場合、どうしたらいいのでしょうか。以前、病院に行くかどうか迷うほどの怪我であれば、腱や骨まで傷ついている可能性まで考えて整形外科がよいという
傷が深くて腱や骨まで達しているかもしれない場合や骨折しているかもしれないような場合には、腱や骨の専門である整形外科医の診察による判断が必要となります。
爪が剥がれたといったケースでも、爪をもとの形に縫い付けるといったところまでやるのが整形外科医の領域です(皮膚科や形成外科も爪の形成をやっています)。犬や猫に噛まれたなんていうのも対応してもらえます。
ちなみにちょっとあれな方の指を詰めたというケースも整形外科医の領域です。
皮膚の怪我だから皮膚科じゃないの?
当然皮膚表面の怪我であれば、皮膚科医も対応してくれます。縫合による止血が必要であれば、傷を縫うこともやってもらえます。
また、やけどなど皮膚の損傷の治療に関しては、皮膚科医の専門領域になります。皮膚科は全身の皮膚の病気に限らず、全身の皮膚の損傷に関しても診療する広い範囲をあつかう診療科です。
皮膚の表面の怪我を治すということに関して言えば、整形外科より形成外科や皮膚科の方が専門になります。
ただ、傷が深くて腱や神経、骨まで到達していることが疑われる場合、それら腱や神経の修復が必要かどうか、骨折してしまっているのかどうか、という判断は整形外科医の領域ということになります。
じゃあ、いわゆる外科ってなに?
外科といってもいろいろあるのですが、通常「外科」というと一般外科を指します。一般外科とは実は消化器を扱う外科のことです。消化器外科とほぼ同義です。
消化器とは、腹部の内蔵のことだという理解でよいでしょう。 一般外科医は胃がんであったり、大腸がんであったりといった腹部臓器のがんの手術をしたり、病院によっては怪我によるお腹の中の内蔵の怪我の修復手術をしたりします。
交通事故などでお腹を強く打った臓器損傷のケース、例えば事故で肝臓や腸などの臓器が破裂した場合など、いわゆる「お腹の中の怪我」は救急科の外傷専門医または一般外科医が対応します。
欧米では外傷の専門の外科医の専門性が確立しているようですが、日本では外傷の専門医は少ないようで、内蔵の怪我というものは頭だったら脳神経外科医、胸だったら胸部外科医、腹部だったら一般外科医が対応するケースが多いようです。
これらの専門医師が対応するような怪我であれば、おそらく救急車で運ばれて治療されるので、自分で何科にかかるか迷うようなケースはほとんどないと思われます。
怪我をして血が止まらないときには
体の表面の怪我で出血が止まらないといっても、ガーゼなどで強く圧迫して怪我した部分を心臓より高い位置にすることでほとんどの出血は止まります。
包丁で深く切ってしまったという場合で動脈を切ったとしても5分ほど圧迫しつづけることでほとんどのケースで止血可能です。体の表面の一ヶ所からの出血で出血多量で死ぬなんてことはまずありません。
血を見てあわててしまう人が多いようですが、まず落ち着いて圧迫止血をしながら、病院にかかるかどうかゆっくり考えましょう。
長時間圧迫しつづけても圧迫をはなすと血が出てくるようなケースは傷を縫って止血する必要があります。落ち着いて病院に電話して、対応してもらえるか確認しましょう。
まとめ
手足や関節の怪我は整形外科が専門、内蔵の怪我はそれぞれの「~外科」が専門ということになります。皮膚表面であれば皮膚科や形成外科が対応可能です。
表面の傷をきれいに治す専門科に関して言えば形成外科や皮膚科となりますが、傷が深くて腱や骨、関節などが損傷しているかもしれない場合には整形外科が専門となります。
怪我した傷をきれいに治すために病院にかかりたいという場合、どうしたらいいのでしょうか。以前、病院に行くかどうか迷うほどの怪我であれば、腱や骨まで傷ついている可能性まで考えて整形外科がよいという
また、特殊な領域では顔面は形成外科、目またはその周囲であれば眼科、鼻の中であれば耳鼻科、口の中は口腔外科となります。
迷う場合にはとりあえず病院に電話をして状況を伝えて、対応してもらえるかどうかをまず確認しましょう。小さいクリニックや会社の診療所などではたとえこれらの専門医がいたとしても傷の処置に必要な器具がないケースもあります。
また、救急外来であっても夜の当直帯だとこれらの専門医が揃っているところは非常に少ないので、夜間はまず当直医が応急処置をして翌日専門の診療科にかかってもらうケースが多いです。
個人的には、とりあえず怪我で内科にくるのはなるべく勘弁していただきたいと思ってこの記事を書きましたので、よろしくお願いいたします。