言いたいことはすべて言おう|日常会話と診察室での会話の違い
診察室での医師と患者さんの会話というのは、スムーズにいかない例が多々あります。
患者さんが伝えたいことを十分伝え切れていなかったり、医師の方からも説明が十分できていなかったりというケースがなかなかなくなりません。
医師側の説明が下手であったり、専門用語をそのまま使ったりして患者さんの立場になって説明できていないことがあり、これらについて医師側の責任は大いにあります。
しかしそれとは別に、診察室の会話というものは日常会話とはその性質が大きく異なるという問題も影響しています。
日常会話と診察室での会話は根本的に違うもの
日常会話というものは、その目的は意思の疎通であったり、感情の共有であったり、いわゆるコミュニケーションを成り立たせるためのものです。
相手の気持ちや感情をくみとり、時として礼儀や世間体を優先して伝えたいことをあえて伝えないことも大切です。
また、相手の感情を害するような表現をさけて、伝えるべき本質をあえてあいまいにして伝えることも必要です。
しかし、診察室における患者さんと医師の会話においては、お互いに自分が伝えたいことを正確に相手に伝えることが必須であり、それがなくては良質な医療は成り立ちません。
いうなれば診察室の会話というものは、日常会話に近いものではなく、ビジネスライクな骨組みを優先しなくてはいけないということです。
まず根底にビジネスライクな会話が成り立つ必要がある
確かに、いろいろな雑談や世間話も、患者さんと医師の良好な関係のためには大切です。
しかし、それはお互いに伝えたいことをきちんと伝えられる会話ができた上で考えるべき次のステップであり、診察室の会話においては優先順位で一番上にくるものではないと考えます。
患者さんは自分が困っていることをまず医師に説明し、自分が何を求めて病院に来たのかをわかってもらうことが最重要です。
そして次にそれに関係した詳細な情報を医師に伝えて、医学的にどのような可能性が考えられ、どのような検査や治療が選択肢として挙げられるのかを確認します。
医師は自分の医療者としての責任において、患者さんに医学的な説明をし、検査や治療の選択肢を提示します。
日常会話のルールを持ち込むことは間違い
じゃあ医師は患者さんとの雑談や世間話は必要ないと考えているのかというと、私がいいたいことの本質はそうではありません。
それら雑談や世間話は良好なコミュニケーションのためには必要なことであり、軽視するような医師がいればそれは良い医師とはいえないと考えています。
私が問題とするのは、診察室での会話において、日常会話のルールにのっとって、伝えたいことがあるのに遠慮してしまう患者さんがいるという点です。
病院を変えたいとか、説明に納得できないとか、そういった医師に対して言いにくい内容を遠慮してしまう方が実際にいます。
今日からこの病院に通いたいけれども、前の医師には悪いから内緒で来たんですとか、そういう方が実際に多いのです。
しかし患者さんの病気、健康を最優先で考えるのであれば、患者さんはそのような遠慮はするべきではなく、そこはビジネスライクな対応を貫くべきです。
実際のところ、医師はそういった患者さんが気にするほど、病院を変えたり治療に同意できないといったりしたケースに不快な感情は持ちません。
医師であれば優先すべきは患者さんにとって医学的に何が一番良いかということであり、それが医師の仕事だからです。
まとめ
患者さんと医師の関係性は、患者さんの健康問題を取り扱う関係上、日常会話的な要素が重視されがちですが、ビジネスにおける損得勘定が絡んだような論理的な話し合いがまず根底に成立していなくてはいけません。
あなたが医師と会話するときに、ご自分の健康や病気に関して納得いかない点があり、医師の気分を害するようなことが予想される発言をしようとしても、それを遠慮する必要はまったくないのです。