胸がどきどきするのは何科かかるべきか|動悸の原因について
動悸とひとことにいってもいろいろあります。 脈の乱れが気になる、脈が速い、駅の階段を上るとドキドキする、など動悸という言葉が示す症状は多彩です。
「あの娘のことを想うと胸がどきどきする」というのも動悸と表現されます(これは病気ではありませんが)。
一瞬胸がドキッとする、とかドキドキッと数秒の発作があった、というのは積極的に病気を疑う症状ではありませんが、ドキドキする状態が数分以上にわたってずっと続くという場合は病気の可能性も考えなくてはいけません。
それでは動悸というのは何科にかかればよいのでしょうか。
動悸はまず心臓内科・循環器内科・循環器科
結論をいってしまうとまず心臓内科・循環器内科・循環器科で相談するのが一番よいでしょう。これらはすべて心臓と血管の内科を意味します。
すべての動悸が心臓が原因で起こるわけではありませんが、一番危険な病気から考えるという観点から考えて、心臓内科・循環器内科・循環器科の優先順位が一番高いといえます。
じゃあどんな循環器内科でもよいのかというと、胸がドキドキするといっても病院についたときにはおさまってしまうケースがほとんどで、そのような状態で心電図だけとっても診断は難しいです。
そこで、24時間心電図を付け続けていただくホルター心電図という検査があります。24時間の間に症状が出るとはかぎらないので必ず診断がつけられるとはいえませんが、通常の心電図よりも診断がつけられる可能性は高くなります。
心電図計の本体は最近では非常に小さくマッチ箱程度の大きさで、心電図をつけたまま24時間普通に生活してもらいます。 ドキドキが出てきたというときにはボタンをおして症状があったことを記録します。
その24時間の心電図すべてを解析してもらい、症状があったときに本当に危ない不整脈が出ていないか、ということをチェックします。 ホルター心電図は大きな設備は必要としないので小さい循環器のクリニックでも通常はおいてあります。
ですので、ドキドキがなんなのか気になるという場合はホルター心電図ができる心臓内科・循環器内科・循環器科の病院またはクリニックにかかるのがよいでしょう。
動悸の原因は大きく分けて三つ
じゃあ動悸の原因にはどんなものがあるかということですが、動悸の原因は大きく三つに分かれます。 ①生理的な動悸、②心臓以外の原因による動悸、③心臓による動悸の三つです。 それでは一つずつ見ていきましょう。
①生理的な動悸
当然のことながら、激しい運動をしたり、ものすごいストレスを感じたり、精神的に興奮したりすると心臓の拍動は増え、胸がドキドキするのを感じることがあります。
これらは正常な体の反応であり、これらのことで動悸がしても病院で検査をうける意義は乏しいといえます。
②心臓以外の原因による動悸
②-1 精神的なものからくる動悸
心臓以外の原因による動悸はさらにまた二つに分かれます。「精神的なものからくる動悸」と、「心臓以外の病気からくる動悸」です。
「精神的なものからくる動悸」というのは、不安を感じて思いつめて胸がドキドキして耐えられなくなってしまうようなパターンや、パニック発作のように急に精神的要素からくるものを指します。 最近では心臓神経症といわれたりします。
心臓自体には病気はなく、不整脈も起きていないものなので、命にかかわるというものではありません。 検査の結果危ない病気が除外されて、心臓神経症だということになれば、それだけで安心して良くなる方もいますが、場合によっては心療内科での治療が必要となることもあります。
②-2 心臓以外の病気からくる動悸
次に、「心臓以外の病気からくる動悸」というのは、その原因は多岐にわたります。 高い熱が出たり、貧血が進んで血が薄くなっていたり、脱水状態になっていたりといった原因で心臓の拍動数は増えてしまいます。
さらに、肺気腫などで肺に病気があったりしても、酸素が十分に取り込めなくなって体を動かしたときに動悸という形で症状を感じることがあります。 それ以外にも甲状腺の異常など、ホルモンに異常を来たす病気でも動悸が起こり得ますし、一部の薬剤による副作用でドキドキするという薬剤性のものもあります。
③心臓による動悸
心臓からくる動悸というものについても、まず大きく二つに分かれます。「不整脈による動悸」と「不整脈以外の心臓の異常による動悸」の二つです。
③-1 不整脈による動悸
まず「不整脈による動悸」による動悸ですが、これは言葉通りリズムがばらばらの不整な脈によることもありますが、規則正しいけれども異常な脈というケースもあります。心臓の脈をコントロールする電気系統に異常が起こり、普段とは違うメカニズムで心臓が拍動してしまうことによって起こります。
規則正しい脈であってもものすごく脈が速かったり、また極端に遅くなったり、バラバラに脈打ったりといろいろなケースがあります。それぞれの不整脈によって緊急性や治療法は異なりますので、循環器の専門の医師がそれぞれの診断に応じて対応するということになります。
③-2 不整脈以外の心臓の異常による動悸
次に、「不整脈以外の心臓の異常による動悸」というのも様々な心臓の病気が含まれます。
心臓の機能が落ちてヘコヘコになってしまう心不全の状態や、心臓を栄養する血管が動脈硬化で狭くなってしまう狭心症の状態、心臓の弁や形に異常があって十分に血液を送り出せなくなるという状態などが含まれます。
つまり脈は正常だけれども、心臓に問題があって十分に血液が送り出せないので、体に負荷がかかると動悸がしてしまい、いままでと同じように体が運動できないという状態です。
実際それぞれの頻度はどれくらい?
動悸で病院を受診した人がそれぞれどんな原因だったかということについては過去に報告があります。
190人の動悸で大学病院に来た患者さんという比較的限られたデータですが、41%がなんらかの不整脈、3%が心臓の形態異常、31%が精神的なものに起因する動悸、3%が全身性の心臓以外の病気、6%が薬剤や麻薬による動悸であったとのことです。
やはり不整脈が41%と結構多いですが、精神的なものによる動悸も同様に31%と多いのが注目すべきところですね。
まとめ
動悸といっても原因は多彩ですが、危険な病気が隠れているケースが少なからずあります。
心配な方は一度ホルター心電図のできる心臓内科・循環器内科・循環器科のクリニックで相談するのがよいでしょう。
参考文献)
Europace. 2011;13(7):920-34
Am J Med. 1996;100:138-48
くりかえしになりますが、「あの娘のことを想うと胸がどきどきする」というのは確かに動悸ですが、病気ではありません。 申し訳ありませんが病院ではどうにもできません!
(※筆者は実際にそういって救急外来にいらした患者さんを診察したことがあります。)