フェリチンでわかる潜在性鉄欠乏症|鉄不足による隠れ貧血

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鉄というのは地球上にたくさん存在しますが、人の体においても例外ではありません。

鉄は赤血球の中の大切な酸素の運び屋であるヘモグロビンを構成するための材料であり、人が酸素を吸って体中にその酸素を届けるのになくてはならない存在です。

そして鉄が何らかの原因で少なくなると、ヘモグロビンが作れなくなって、その結果赤血球が作れなくなります。この状態を鉄欠乏性貧血といい、全身に酸素を十分に届けられなくなり動悸やめまい、頭痛、疲労感という形で症状が出てきます。

ここでいう貧血血液の中のヘモグロビンの値が低い状態のことです。貧血で倒れる」というのは医学的には「失神」なのでまた別の状態です。「貧血で倒れる」とは別に考えていただければと思います。

「貧血で倒れる」については下の記事もご参照いただければ幸いです。

「貧血で倒れる」は間違い?朝礼でなぜ人は倒れるか

「貧血で倒れる」という言葉があります。よく、朝礼で倒れたりした人のことを貧血で倒れたということがありますが、これは「貧血」という単語が誤って使われていると思っています。

さて、近年、健康診断では正常なのに、鉄分の不足により疲労感などが出てくる潜在性鉄欠乏症というものが注目されており、ここではそのような隠れた貧血について書いていきたいと思います。


まず貧血かどうかはどうやって調べるの?

健康診断の採血では必ず「Hb」または「Hgb」という項目があるはずです。これがヘモグロビンです。

ヘモグロビン値は労働安全衛生法によって定期健康診断の採血項目の中に入っていますので、健康診断をきちんと受けている人であれば必ず調べているはずです。

貧血かどうかはこのヘモグロビン採血値を見て判断するのですが、近年、ヘモグロビン正常であっても疲れやすいなどの症状がでる潜在性鉄欠乏症が話題になっています。

潜在性鉄欠乏症は、ヘモグロビンはかろうじて保たれているけれども、体に予備として蓄えられている鉄分が空っぽに近い状態です。いわゆる鉄欠乏性貧血一歩手前という状態です。

じゃあ潜在性鉄欠乏症どうやって調べるの?

潜在性鉄欠乏症は健康診断のヘモグロビンを見ても診断できません。 鉄分が足りていないかどうかは、予備として蓄えている鉄分を調べなくてはいけません。

ヘモグロビンとして血液の中で働いていない鉄分は、予備として肝臓、脾臓、骨髄、心臓、腎臓、筋肉などに様々な場所に保管されています。

その予備の鉄分のことを貯蔵鉄といいますが、この貯蔵鉄フェリチンという採血の値を調べることでわかります。 フェリチンは、血液中に漏れ出てくる貯蔵鉄のことで、この漏れ出している貯蔵鉄の量を調べることで、予備の鉄分が十分にあるかどうかを調べることができます。

ヘモグロビン値は採血をやっている病院であればどこでも調べることができます。 フェリチンも採血を行っている病院であればだいたい調べることができます。しかし病院によっては外の検査機関に採血検体を送って検査するところもありますので、結果が出るのが後日となる場合があります。


潜在性鉄欠乏症だとどうなるの?

鉄分はヘモグロビンとして働いていなくても、体の組織で代謝に関わっていると考えられています。

とくに生理がある女性は、定期的にヘモグロビンが減ることになるので、男性に比べて頻度が多いことが知られています。

その結果、ヘモグロビンが十分であっても、貯蔵鉄がぎりぎりだと疲れやすいなどの症状がでることが知られています。

また、潜在性鉄欠乏症はめまいや頭痛、肩こり、食欲低下などのさまざまな症状との関連も疑われています。

潜在性鉄欠乏症症状治療でよくなるの?

結論から言うと潜在性鉄欠乏症の症状は鉄剤の補給でよくなる可能性があります。

2012年のスイスでの報告で、ヘモグロビンの値は正常で、フェリチンが50 ug/L以下と低い値であり、かつ疲れやすいという症状がある198人の潜在性鉄欠乏症女性を対象とした研究があります。

12週間の鉄剤の内服治療と、プラセボ(偽薬のことです)の治療で比較試験を行い、鉄剤治療では47.7%で疲労感が改善し、 プラセボでは28.8%で疲労感が改善したとの結果でした。 プラセボでも4人に1人強が改善していますが、鉄分の補給でだいたい2人に1人が疲労感がよくなったということになります。

鉄分の補給で有意に症状がよくなっているため、やはり程度の差はあるでしょうが潜在性鉄欠乏症が疲労感原因になるということが考えられます。

しかし鉄剤を補給しても2人に1人はよくなっていないので、当然ですがすべての疲労感というものが潜在性鉄欠乏症によるものとは限らないようです。その点は注意が必要です。

潜在性鉄欠乏症何科へ行けば調べてもらえるの?

一般的な内科のクリニックであればフェリチンの採血検査、鉄剤の処方は可能です。 しかし潜在性鉄欠乏症であれば、その原因も調べなくてはいけません。

ただの鉄分摂取の不足であればよいですが、胃潰瘍や胃癌などによりじわじわ出血していて鉄分が足りなくなっているという可能性もあります。

また、女性で生理の量が多くて気になっていたという人は、内科というよりも婦人科のほうが適しています。 生理の量が多い場合や不正出血があると子宮筋腫や子宮がんが隠れていることもあるので、婦人科であればそういった検査までできるからです。 また、実際に多くの婦人科でフェリチンの採血検査、鉄剤の処方は可能です。

とりあえず疲れやすいなら潜在性鉄欠乏症?

潜在性鉄欠乏症は残念ながら、というか当然ですが、すべての疲労感などの症状を説明しうるものではありません。

潜在性鉄欠乏症の人が鉄分を補給すれば、必ず症状が良くなるかというとそうではありません。

上のスイスでの報告においても、疲労感は改善したものの生活の質自体には大きく影響しなかったと結論しています。しかも改善したと書いてある疲労感においても、2人に1人は良くなっていないわけです。

また、論文によっては潜在性鉄欠乏症めまい肩こり頭痛などの原因になり、鉄剤の補給で多くの症状が改善するとしているものもありますが、一方で運動機能には影響しないとする論文もあります。

原因不明の疲労が続く場合には確かに潜在性鉄欠乏症を疑ってフェリチンを調べてもらうことも必要ですが、当然ながらそれ以外の原因の可能性も十分に調べてもらわなくてはいけません。

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まとめ

健康診断でヘモグロビンの値が正常であっても、疲れやすいという症状がずっと続く場合は、内科または婦人科フェリチンの値を調べてもらう潜在性鉄欠乏症かどうかがわかります。

しかし疲れやすいといった症状は必ずしも潜在性鉄欠乏症から来ているとは限りませんので、症状が続く場合は内科でしっかり調べる、場合によっては心療内科で相談するということが必要になります。

参考文献)
CMAJ 2012:184(11);1247-1254
治療 2003:85(11);89-91
J. Nutr 2001:131(2);676S-690S