病院をうまく使う人はどんな人か|医師から見て要領のよい人とは
けっこう多いのですが、医学的にできないことをしてもらおうとして来る人がいらっしゃいます。 「風邪を引いたので治る注射をしてください」みたいなことを言われる方が、実際にいます。
誤解をさけるために言いますと、患者さんは「実際に医学的に何ができて何ができないのか」は詳しくなくて当たり前で、これを知っている必要はまったくありません。
しかし、ここで私が注目したいのは、逆に医師から見て「うまく医療を使っているな」と思う人がいることです。
では、それはどのような人なのかという点について考えてみたいと思います。
一歩踏み込むと受診のステップを省略できる
うまく使えている使えていないというと少し語弊があるかもしれません。しかし、そのような例をあえて挙げると、例えば手がしびれるという症状で内科に来る方の中に、話を聞くと実は数日前に手をぶつけてそれから手がしびれるという方がいます。
この場合、いわゆる病気による手のしびれではなく、怪我による手のしびれになるので、専門は整形外科になります。 内科でできることは、手のしびれを起こすような病気がないかどうか調べることなので、おそらくこのケースでは内科を受診することはあまり意味をなさないと言えます。
怪我によるものは整形外科ということさえ知っていれば、内科にかかってしまうステップを省略できたわけです。
このケースの患者さんに対しては、話を聞いて、それはまず整形外科に診てもらってくださいと伝えるだけになってしまうので、こちらとしてもなんだか申し訳ない気がします。
どういうのが「要領の良い」受診なのか
要領が良く病院を使う上で大切なのは、あらかじめ何科にいくべきなのかを調べたり、電話で確認したりすることで、間違った診療科にかかることを避けることです。
これは何科にかかるべきなのだろうと医者も悩んでしまうような難しいケースも確かにあります。こういった難しいケースというのは内科にかかって相談する以外にありません。それも内科の仕事の一つです。
しかし、それは非常に限られた場合で、実際にほとんどの症状に関して何科にかかるべきかというのは、インターネットや病院への問い合わせでわかってしまいます。
つまり前もって電話で確認してから病院に行く人
外来中に看護婦さんから、こういう症状の人がかかりたいって電話が来ているんですが大丈夫ですか?と聞かれることがあります。
大丈夫なケースではそう伝えますが、違う診療科の方が良かったりする場合はそう伝えます。 また、自分の中でこれをしてほしいというものがあるのであれば、必ず前もって電話で確認した方がよいです。
診察室に入ってから医師に尋ねて、そういうことはできませんということになると、病院に来る手間や時間、診察料金などすべて無駄になってしまいます。
病院によっては電話での問い合わせで、外来の医師に確認してくれるスタッフがいるところもあります。 電話に出た病院の事務の方ではわからなくても、看護師や医師に取り次いでくれることもあります。
ですのでまず電話で聞いてみることが大切であり、これをすることで要領よく病院を利用できることになると思います。
そして診療科の守備範囲を調べてから来る人
この人は病院をうまく利用しているな、と思う点のもう一つに、それぞれの診療科の守備範囲をきっちりと把握しているという点があります。
私は内科ですが、別の症状で来た人で腰痛がある人に、腰痛も診ますかと聞くと「いや、ちゃんと整形外科で診てもらうから大丈夫です」と言われてしまったりします。
そういう時はすこしさみしい気もしますが、ああ、この人はそれぞれの専門科の医師に診てもらった方が良いということをちゃんと知っているのだなと思います。
何科が何を見ているかなんてよくわからないよという人も多いかもしれませんが、自分の症状を診てもらえるかどうか病院に前もって電話することでわかりますし、インターネットで調べれば今ではだいたいわかってしまいます。
そしてそれでもわからないときに、かかりつけの病院や内科のクリニックで相談するというのが賢い病院の使い方だと思います。
まとめ
私の印象としては、目的とすることがその病院で可能かどうか前もって電話で確認する、そしてそれぞれの診療科の守備範囲を知っているという人が、病院を要領よく使っているという印象を受けます。
これらはとりあえず病院にいこうと考えたときに、一歩立ち止まって確認するだけなのですが、受診のときの手間などを考えるとその差は非常に大きいように思えます。