大病院の専門外来の総合診療能力について|初診料1万円の論点

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大学病院などの高度医療機関の外来の受診を希望される患者さんがけっこう多いです。

確かに、外から見れば高度な検査や治療が受けられるという印象が強いのかもしれません。

それが間違いというわけではありませんが、一方でご自分の症状や病気と専門の外来の守備範囲が合致しないと、受診しても満足な診療は受けられません。

大病院のブランド志向を頭ごなしに否定するつもりはありませんが、そもそも大病院にかかれば心配ないという考え方には少し違和感を感じます。


最初に総合診療的な外来を受診することの重要性

2014年4月に、紹介状がない場合には、大病院の初診時に1万円を徴収する案が出ていたというニュースが話題になりました。

目的は高度医療機関における軽症な患者さんの受診を抑制のためであり、本当に高度な治療が必要な人のために医療資源を確保する目的でもあります。

このニュースでは1万円という金額が話題性を持って先行してしまい、「貧乏人には死ねというのか」というような議論を呼んでしまっていましたが、この問題の本質とはすこしずれているように思います。

そもそも、初診料がいくらであっても、いきなり大病院専門外来に行くというのは、必ずしも利点があるとは限らないからです。

専門的外来総合診療的な能力は高くない

これは専門外来の医師が総合的な診療をする能力がないという意味ではなく、病院の医療設備や診療システムの問題の話です。

専門外来をやっている医師だから総合診療科のような診察ができないのかというと、決してそんなことはありません。

しかし専門外来は、その守備範囲である領域に特化した診療のシステムができあがっている分、それ以外の検査などをしにくいという問題があります。

専門外来がひしめく大学病院などの大病院では、専門外の検査の予約をしようとすると非常に混んでいて、予約が数ヶ月先になってしまうようなこともあります。

これは大学病院などの大病院では、予約枠が専門外来高度な治療を受ける患者さん用に確保されているからで、それ以外の診療科からの予約を受け入れすぎると、そのような高度な治療を受ける患者さんの予約枠を圧迫してしまうからです。 このために、大病院の専門外来では専門外の検査をするフットワークというものが重くなりがちです。


最初に大病院にかかることで損するケース

例えば、胃痛に対して胃の内視鏡をしましょうと言っても、胃の内視鏡の検査は胃癌の手術前後の患者さんのために確保されてしまっており、予約がだいぶ先になってしまいます。

ですので胃痛の検査で数ヶ月待つというはめになることも珍しくありません。 これが内視鏡をやっている開業のクリニックなどであれば、そのようなスクリーニングレベルの内視鏡でも予約を待つことなくやってもらえるケースが多いです。

この場合、質の高い医療という面からみても、迅速に胃の内視鏡をやってもらえる病院にかかったほうが正解であったといえます。

もし仮にこれで胃癌が見つかったとすれば、大病院の専門外来へ紹介してもらい検査や治療が進んでいくことになるので、結果としてはこの方が診断や検査が早く進む可能性があります。

大きな病院安心神話は疑ってかかる必要がある

このように大学病院などの専門外来というのは、医師の診療の自由度が医療設備や診療システムの問題からある程度限定されてしまいます。

ですので、あなたが何か相談したいことがあっても、その外来の守備範囲外であれば、「それはこの外来では診ると予約が先になってしまい、検査まで余計に時間がかかってしまうので、近所の病院で相談してください」という結果になりやすいのです。

また、当然ですが病気によっては、大病院であっても特化している専門外来というものがない場合があります。 大学病院ごとに得意な専門というのが違ったりしますので、まずどの大病院にかかるかというのも大切な選択になります。 ですので「とりあえず大病院」というのは必ずしも正しい選択というわけではないのです。

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高い初診料に見合う初期診療とは限らない

つまり、高い質の医療をうけるためには、自分の症状や病気が、大学病院の専門外来へ行くことで利益が得られるものなのかどうかというのを一般内科のレベルでよく吟味してもらう必要があります。

大学病院専門外来は狭い領域を深く診ることに特化しています。その分、広く浅い診療というものは非常にしにくくなっています。

つまり大病院で高い初診料を払って初期診療をしてもらったとしても、その初期診療レベルは必ずしも高いわけではないのです。

ですので「急がばまわれ」で、まず近所の病院で相談した方が、結果として診断がついたり、治療が始まるまでが早くなる可能性もあります。

前述のニュースも、紹介状があれば初診時の別途の料金はかからないわけで、この考えを支持するものなのだと思います。

まとめ

大病院の専門外来は、高度な診療が受けられると思いがちですが、それは狭い限定された分野においての話に限られます。

健康に問題や不安があった場合、まず近くのクリニックで広く浅く診てもらうというステップを軽視するべきではないと考えます。

総合診療的な働きをしている中小規模の病院やクリニックの価値を、もっと広めて患者さんに知ってもらう必要があると感じています。