総合診療科に対する期待とよくある誤解|「なんでも診る」の意味

けっこう多いのですが、「私は難しい病気を2個も持っているので、これらを総合的に診てもらいたいので総合診療科にいくつもりです」といって総合診療科を受診する方がいます。
確かに最近では、大きな病院で「総合診療科」とか「総合内科」という科を設置する病院も多くなってきました。
総合診療科という名前から、いろんな病気を総合的に診てもらえると考える方も多いです。 しかし、これは部分的には正しいですが、実際のところ少し違います。
大きな病院の専門診療科なら安心でしょ?
大きな病院の専門の科にかかれば問題ないと考えられる方が多いですが、実際のところそうでもありません。
大きな病院では、それぞれの診療科が専門に特化しており、細分化されています。 治療の高度化のためといえばその通りかもしれませんが、そのためにそういった外来では、専門外の検査がやりにくくなっています。
これはシステム上の問題で、専門の診療科にかかっている患者さんのための検査枠が優先されるため、専門外の診療科からの枠は限られてしまっているからです。 このために、患者さんにとっては手間がかかる仕組みになっている現状があります。
専門に特化してると何が問題なの?
例えば「足が痛む」という症状の場合、神経の異常であったり、血管の異常であったり、その理由は様々です。
そこでまず、整形外科を受診すると、整形外科領域に特化した腰椎や末梢神経の検査が行われます。 その検査の結果何も異常がないということになると、整形外科の病気ではないので他の科をかかってくださいという話になります。
そして次に、足の痛みの原因を調べるために、血管の検査をする血管外科や循環器内科にかからなくてはいけません。
この場合、整形外科での一通りの検査が終わった後に、血管外科や循環器内科へという流れになるので、非常に時間がかかります。
診断にかかる時間のみならず、患者さんの負担、医療経済にとってもあまり好ましい流れではありません。
そこで大病院では総合診療科の役割が大切です
そこで、最近では大きな病院で、総合診療科というものができており、専門科の前の段階で適切な科を紹介する役割を担っています。
ここでの総合診療科の役割というものは、あくまで患者さんに適切な診療科を紹介するという役割です。
「どんな症状でも診る」という理解は正しいですが、「どんな病気も診る」というわけではありません。
専門的治療を要しないようなものであれば、継続して診療することも可能ですが、専門的治療が必要となれば、その科へ紹介することになります。
先ほどの例でいえば、足の痛みに対して、整形外科にかかるべきか、血管外科や循環器内科にかかるべきか、初期段階で判定してくれる科ということになります。
じゃあ病気が複数あったら総合診療科にかかっても意味ないの?
複数の病気を持っていても専門的な治療が必要でない程度のものであれば、一つの診療科で診療できるケースは確かにあります。
例えば、気管支喘息で呼吸器内科で専門的治療を受けていて、さらに高血圧も一緒にそこで診てもらうくらいであれば可能でしょう。
また、複数の専門的治療を要する病気があるケースでも、総合診療科は意味がないかというと、そんなことはありません。
確かに、複雑な病態が入り混じったような状態で、どの専門科が中心になるべきか決められないようなケースでは、総合診療科が主科となることもあります。
そのような場合、総合診療科内ですべて診療するわけではなく、それぞれの専門科へのコンサルトを行い、各診療科の中心でそれらをマネージメントするという形式になります。
しかしこの場合、一つの科で完結して診るということにはならないので、その点については知っておいていただきたいと思います。
まとめ
現在、総合診療科に期待されている役割が、この専門診療科にかかる前の窓口となる役割です。
複数の難しい病気をまとめて全部診てくれるというわけではないので、そのことを知っておいていただけると幸いです。