病院の下痢止めと薬局で買える下痢止め|止瀉薬の種類と効果
急な下痢で病院へという経験をお持ちの方も多いかと思います。 もちろん、血便が出たり、水を飲んでも吐いてしまうようなひどい状態であれば、誰もが迷わず病院に行くはずです。
しかし、そこまでひどくないという場合に病院に行くべきかどうか迷う方もいるかもしれません。 急な下痢で病院にかかる場合に、どこにいけばよいか、どうすればいいかに関しては、
急にひどい下痢にになって、食欲もなくなって、困ったというケースありますよね。 あまりにひどければ病院に行かなくてはいけませんが、では何科にかかればいいのでしょうか。
を参照していただければと思います。
ここでは、下痢で病院にかかったときにもらえる下痢止めの薬、そして薬局で買える下痢止めについて具体的に説明します。
下痢で病院にかかるともらう薬
最初に、病院でもらえる下痢止めについて、作用別に説明していきます。 薬は同じ成分であっても、製薬会社によって商品名が異なりますので、ここでは代表的なものの商品名と成分名を挙げていきます。
薬の作用で分類すると、止瀉薬(下痢止めのことです)は、吸着薬、収斂薬(しゅうれんやく)、整腸剤、殺菌剤、腸管運動抑制薬があります。
具体的にどんな薬があるのか:吸着薬について
吸着薬はその名の通り、有害な物質を吸着する作用のある薬です。 吸着作用により下痢を抑える薬の代表的なものにアドソルビン(天然ケイ酸アルミニウム)があります。
アドソルビンは、下痢の原因となる細菌性の毒素や、余分な水分を吸い取ることで下痢を抑えます。
具体的にどんな薬があるのか:収斂(しゅうれん)薬について
収斂は「しゅうれん」と読み、複数の質の異なる物を一箇所に集めるという意味があります。 収斂薬の代表的なものに、タンナルビン(タンニン酸アルブミン)があります。
タンナルビンは腸でタンパク質を沈殿させて膜をつくることで、腸の粘膜を守る作用を発揮します。 腸の粘膜を守って、炎症を抑えることで下痢を抑える薬です。
タンナルビンの注意点として、乳性タンパク質であるガゼインが含まれるため、牛乳アレルギーを持つ人は使用できないことが挙げられます。
具体的にどんな薬があるのか:整腸剤について
腸の中は実は細菌だらけですが、正常ではこれらの細菌が腸を守る働きをしています。 これらの細菌のバランスが崩れてしまうと、腸を守ることができずに下痢などの原因となります。
整腸剤は、腸の中で有益に働く細菌を増やす薬です。具体的に乳酸菌製剤や酪酸菌製剤などがあります。 具体例を挙げると、乳酸菌製剤ではビオフェルミンやラックB、酪酸菌製剤ではミヤBMなどが有名です。
具体的にどんな薬があるのか:殺菌剤について
下痢のときに用いる薬の中の一つに、殺菌作用を持つフェロベリン(ベルベリン塩化物水和物)が挙げられます。
フェロベリンは腸内の細菌の増殖を阻止し、腸内の腐敗や発酵を抑える作用で下痢をおさえます。
具体的にどんな薬があるのか:腸管蠕動抑制薬について
腸管蠕動抑制薬は腸の動きを抑えて、下痢を抑えるタイプの下痢止めです。代表的なものににロペミン(ロペラミド)があります。
ロペミンの作用は他の下痢止めに比べて強力ですが、そのために有害なものを体の外に排除できなくなるため、原則的に細菌性の下痢などには使用しません。
ロペミンは腸の動きをつかさどる神経を、腸のオピオイド受容体という部分に作用して、麻痺させることで、腸の運動を抑え、強力に下痢を抑えます。
オピオイド受容体に作用する別の有名な物質としてモルヒネがありますが、ロペミンは脳へは作用せず、依存性などは起こしません。
ちなみにですが、モルヒネの副作用の一つに、腸の動きが麻痺することによって起こる便秘があります。
実はこれらの成分が入った薬が薬局で買える
あまり知られていないのですが、これらと同じ成分が入った下痢止めが薬局で自分で買えます。
有名なところでは「ストッパ下痢止め」(ライオン)と「トメダインコーワ」(興和新薬)があります。
ストッパ下痢止めは、配合量は医療用に比べて少ないものの、殺菌作用を持つベルベリンと収斂薬のタンニン酸が成分に含まれています。
また、トメダインコーワの方は、上に挙げた中ではベルべリンに加えて腸管運動抑制薬であるロペラミドが入っています(ロペラミドが入った薬が薬局で買えるのは自分も今知りました)。
しかもトメダインコーワは錠剤の他に、貼るタイプの下痢止めであるトメダインコーワフィルムが出ており、こちらはロペミラミドの量が、医療用で1錠1mgに比して、1枚0.5mgと結構な量入っています。
でも、とりあえず下痢止めを飲めば治るというわけではない
病院では下痢の性状や症状に合わせて薬を処方されることになるとおもいますが、自分で薬局で買うにしても、下痢について一つ知っておくべきことがあります。
特に感染性腸炎の場合にとって、下痢止めは根本的な治療薬ではなく、症状を抑える薬に過ぎないということです。
下痢止めは下痢に効くのは間違いありませんが、下痢を止めることが必ずしも腸の炎症の治療にとってよいわけではありません。
急な下痢の多くはウイルスなどによる感染性の腸炎によるものであり、適切な水分補給と整腸剤だけで数日で改善してきます。
感染性の腸炎であれば、基本的に強力な下痢止めは必要ではありません。というか、下痢止めは症状を抑える薬なので、そもそも根本的な治療薬ではありません。
この場合、下痢というものは、腸の炎症によって水分が腸から吸収できなくなることで起こります。 一方で別の側面から見ると、下痢は感染したウイルスや細菌など体にとって害のあるものを体の外に出そうとする反応です。
ですので、感染性腸炎の場合には、下痢止めを使うことで体に有害なものを外に捨てることができなくなり、病状が悪化したり長引いたりという可能性があります。
薬で下痢を止めることの長所と短所を知っておいてください
だからといって下痢止めはもらえないかというと、実際は多くの医師が感染性腸炎に対しても上に挙げたような下痢止めを処方します。
多くの方は仕事があったりして、下痢を止めないことには日常生活に支障をきたす場合があるからです。 そこで、炎症が長引く可能性があることをわかっていただいた上で、一時的な症状の緩和のために、下痢止めを使ってもらうというのが実際のところです。
まとめ
下痢止めはあくまで症状を抑える薬であり、下痢の根本的な原因である腸炎を直接治療する薬ではありません。
このことをしっかりと押さえた上で、状況に応じて下痢止めを使うことが大切です。
参考文献)
診断と治療 101(2):262-266:2013