医者はどれくらいあなたのことを覚えていないか|患者さんに対する記憶力

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医者患者さんのことどれくらい覚えているのか、みなさん考えてみたことってありますか。

何回か病院に行ったあとに、前と同じ質問されたとか、町で会ってもあやふやな対応だったとか、そういう経験をお持ちの方も実際いるかもしれません。

というか、すいません。先に謝っておきます。私がそういうことを患者さんにした経験があります。申し訳ありません。

そして、いいわけしようという意図ではありません。医者が患者さんのことをどれくらい覚えているか、ということについて、自省も兼ねて書いていきたいと思います。


まず医師一人が診ている患者数を計算してみる

まず医師は何人くらいの患者さんを継続的にかつ同時に診療しているのかを概算してみたいと思います。

外来だけのケースで、ざっと計算してみます。例えば、週3回外来をしている医師で、だいたい1回の外来で30人くらいを診ると仮定します。

そして、おおざっぱに1ヶ月ごと(4週毎)の診察と仮定します。 そうすると30×3×4=360人の患者さんを定期的に診ていることになりますね。

これは結構少ない例で、混んでいる人気の開業クリニックなどでは午前午後で100人を超えるようなところもあります。

開業のクリニックで週5日、外来をしているとすると、100×5×4で2000人! そしてすべての人が定期的に来る人ではなく、さらに定期的でないその日のみの受診の人とかも入っているわけです。

「私は自分の患者さんの顔と名前はすべて覚えている!」という医師もいるかもしれませんが、実際のところすべて覚えている医師はほとんどいないと思われます。

診察室で覚えている様な態度だったけど?

診察室でカルテを見ながらであれば、患者さんの診療に必要な情報は、たとえカルテに記載されていない細かいことに関しても、問題なく思いだせることが多いです。

カルテには医学的に重要なことを抽出して書いてありますが、それに基づいて、患者さんの医学的以外のことについて記憶を呼び出すことができるからです。

しかし、医者は医学的なことを優先して頭のメモリーを使ってしまっています。 そのために患者さんに町で会っても覚えていられるための情報というのは、どうしても優先順位としては低くなってしまっています。

その結果、カルテなしで街中で会ったときに覚えているかどうかとなると、かなり難易度が上がります。 そして街中で会って覚えていないという場合、医師は必ず覚えているかのように振舞います。

こんなこと書いていいのかなと、ちょっと思いましたが、実際そうです。


覚えていることが良い場合だったとも限らない

このような状況下で、それでも覚えている患者さんというのが、やはりいらっしゃいます。

まず、付き合いの長い患者さんは、別にインパクトがなくても自然に覚えてしまいます。 また、短期間の患者さんでも覚えている人がいて、それにはそれなりの理由があります。

具体的には、病気の治療が非常に良い経過で印象に残っている場合と、治療に難渋したために印象に残っている場合の両極端のケースです。

また、患者さんの性格にインパクトがあり、印象が強い人の場合も、当然記憶に残ります。

逆に街中で会って思い出せない患者さんというのは、特に大きな問題なく経過し、記憶に残るような出来事がなかった場合が多いように思います。

場合によっては医者は外来を予習していることもある

思い出せないという状況を防ぐために、医師の方も実はいろいろやっています。 患者さんについての記憶を補う意味と、外来業務の迅速化のために、外来を予習する」という方法があります。

すべての医師がしているわけではなく、また、目的としては診療業務の迅速化の意味合いが強いかもしれませんが、この業界で「外来の予習」という言葉が実際にあります。

前日に、次の日の予約の患者さんのカルテに目を通しておいて、必要なことを書き込んでおくのです。 例えば、この人は半年間採血してないからそろそろ採血勧めないとなー、とかそんな感じのことを記入しておきます。

そして実際に外来で「そういえば、しばらく採血してないですよね」とか言うわけです。 この予習の時点で、結構いろいろ思い出すという医師も多いかもしれません。

医者は覚えているかのように振舞わなくてはいけない

実際に、診察室にしろ街中にしろ、覚えていないことがわかるような受け答えがあると、患者さんには不快感を与えてしまうことになります。

そして、前述の計算を振り返ると、実際のところすべての患者さんのことを覚えているという医師はほとんどいないのではないかと思っています。

ですので、医師側は例え覚えていなくても、覚えているかのごとく振舞うことが求められているわけです。

患者さん全員を覚えているべきなのは間違いありませんが、やむなく覚えているかのように振舞う時、医師もまた罪悪感を感じています。

でも覚えているフリってどうなんですかね

でも、この現状を正直に言う医師というのも、なかなかいないわけです。 「医者は患者さんのことを実際のところあまり覚えていない」なんて言ったら、医師というものに対する印象が悪くなるだけだからです。

自分にとって得なことは何もないので、この問題に対して、結局多くの医師が、「いやだいたい覚えていますよ」みたいな返答に落ち着きます。

しかし、だからといって業界的に「覚えているフリ」を許容し続けるというのも、どうなのかなぁという気持ちがあります。

「実際のところこんなです!」と包み隠さず言ってしまうことで、何か良くなることもあるかもしれないと思い、この記事を書いてしまいました。

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まとめ

医師は患者さんのことを覚えていなくても、覚えているように振舞います。

個人的には、すべての患者さんに対して、町で会ってもわかるように記憶するべく、今後も努力をさせてください。 しかし、時として覚えているフリをすることをお許しください。