総合診療医の育成がすすむと、今いる開業医はどうなるのだろう

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なんか最近大病院初診料に関するニュースが多いですね。 紹介状がないと初診時に1万円の別額の徴取を検討中ということで、先日ニュースになっていましたが、さらに追加の案があるようです。

初診料、全額自費も検討 紹介状なく大病院受診 – 47NEWS

これは国が徹底的に高度医療機関と、地域におけるかかりつけ医の役割の分業化を目指していることは明らかです。

検討中なのにちょびちょびとこういったニュースが流れてくるのは、世間の反応を見ているのかなという気すらしてきます。

この問題について、多くの反論は「金持ちじゃないと大病院にかかれなくなるのは論外!」という点に集中します。

しかし、「大病院の入り口を狭めるのであれば、地域における質の高い総合診療を整備するのが先ではないのか?」という点にあまり注目がいっていないように思っています。


日本が現在目指している医療システム

日本が今目指している医療の形態というのは、海外で見られるような、家庭医がいて、その紹介先に専門病院があるという形です。

そして、この受診方法のレールにすべての人をあてはめることで、高度医療の提供を適切化し、最終的には医療費削減にも結び付けるという目的があります。

ただ、このシステムを日本で達成する上で、大病院の初診の受け入れ口を狭めるだけでは、不十分なのは明らかです。

海外では、家庭医という診療科の専門性が広く認められているということを以前、以下の記事で書いたのですが、

なぜ「腹痛科」とか「腰痛科」みたいな症状別に診る科はないの?

あまり病気にかかる経験がない若い方とか、インターネットなどを使う機会のない高齢の方にとって、適切な病院にかかるということはなかなか難しいことだと思います。そういった病院にかかることを難しくしている要因の一つに、症状別に診てくれる診療科というものが存在しないことが挙げられます。

日本では、これがまだ全然整備されていないので、どうなるのかなと思っています。

質の高い総合診療は誰がする?

現時点で、高度医療機関における医療資源が、大病院へのブランド指向のために、適切な提供が難しくなるケースが実際起こり得ます。

ですので、この地域のかかりつけ医からの紹介で大病院へという流れを、今以上にがっちりと固めるのは、患者さんにとっても、医療経済にとっても良いことだと思います。

しかし、その入り口となる開業医に、質の高い総合診療を期待している一方、それとは別に多くの総合診療医を育成しようとする流れがあります。

今現在、総合診療というものに関して専門的な教育を受けてきた医師は少ないわけで、ほとんどの開業医が教育機関で専門科の教育を受け、その後開業に至っています。

質の高い総合診療を求めるのであれば、若い時期から専門科の教育ではなくて、総合診療の教育を受けた医師を作る必要があります。


今いる開業医の行き場はどこになるのだろう

もし今後、質の高い総合診療医の育成が進み、地域に家庭医のような形で根付くと、専門科の教育を受けて開業した医師は、どうなるのだろうとふと思いました。

専門科の教育を受けた医師が開業すると、ある程度自分の診療科の専門性を生かしながら、かつ地域における総合診療を担うという現状があったわけですが、この後者の仕事は総合診療医の仕事になります。

そうすると、専門科の教育を受けた医師の開業の難易度は上がり、また場合によっては行き場がなくなるのかなとも思いました。

医師教育システムの見直しは?

そう考えると、国が目指す医療システムの達成のためには、今の医師の教育システムをあらかじめ根幹から変える必要性があります。

このままだと、今まで通りに多くの医師が専門科の教育を受け、そして開業が困難なために、専門的治療を行う大病院以外に居場所がなくなるという時代が来てしまう気がします。

大病院は大病院で数も限られているので、医師という職業であっても、どこの病院にも就職できないという日がくるのかもなぁ・・・と感じました。

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まとめ

大規模な医療の変革にむけて、あらかじめ受け皿を整えた上で進めないと、社会における医師の適正配置ができなくなる可能性があります。

いくら医師を増やしても、その地域において患者さんが必要とする医師を作らなくてはいけないという根底の問題があります。

今現在、医師が足りないといって増員をする方向へ進んでいますが、「適切なところ」へ「適切な専門医」、「適切な総合診療医」を配置するということが、果たして日本で達成されるのか、もっと注目するべきだと思います。